長距離移動のツーリング性能はもちろん、ワインディングを楽しむコーナリング性能まで、オンロード性能は文句無しの仕上がりだったVストローム800DE。今回はいよいよ未舗装路での走破性をテスト!……なんですが、大型アドベンチャーバイクでダート走行って一般ライダーでも本当に楽しめるの⁉︎

オフロード好きのライダーでも『大型アドベンチャーでのダート走行』は別物です……

“デュアル・エクスプローラ”の冠をつけ、フロントは大径ホイールの21インチ、Vストロームシリーズ最長となる前後220mmのサスペンションストローク量を確保した『Vストローム800DE』。

前回の高速&ワインディング編で、長距離移動やコーナリング性能を確かめたんですけど、まるで一般的なジャイロ効果の常識にあてはまらないくらい、21インチの大径ホイールでもロードスポーツモデルとほとんど変わらない旋回性能だったんです。

Vストローム800DEは、ホイールインチやサスペンションストローク量などに関係なく、あくまでもVストロームシリーズらしい、どこまでも快適に走れる“スポーツアドベンチャー”のマシン性能をしっかりと備えていました。

そして今回はいよいよ未舗装路に持ち込んで、Vストローム800DEのダート走行性能を試してみたいと思います!

先に申し上げておきますと、筆者の私(岩瀬)は、大のオフ好きライダーではこざいますが、残念ながら大型のアドベチャーバイクを自在に振り回したり、テールスライドやカウンターなどをガンガンにキメられるほどの腕前は持ち合わせてはおりません(笑)。

いくら周囲にオフロード好きを公言しているとはいえ、私の場合は250ccクラスくらいまでの軽いマシンでの話が主でして、やはり重量のある大型アドベンチャーバイクでのダート走行は、だいぶ勝手が違うと言うか、ちょっと乗り方が異なる“別物”と思っていたんですよね……。

万が一の時に、車体の軽さや扱いやすいパワーでリカバリーしやすい小排気量のオフロードマシンとは違い、大型アドベンチャーバイクは「大柄な車体でも扱える技量がある人だからこそダートでも上手に乗れるもの」と思い込んでいたので、ちょっと苦手意識があったんです。

あれっ⁉︎ フラットダートならオンロードと変わらないくらい走りやすいんだが……⁉︎

まずはベーシックなエンジン出力特性となる「Bモード」をメインに、未舗装路を走ります。

Vストローム800DEは“未舗装路の走行ありき”で開発されたとはいえ、車重が230kgはある大型アドベンチャー。

もしも不安定な路面で滑りそうになったら……と不安がよぎりつつ、恐る恐る未舗装路の状況を確かめながらフラットダートを進んでみると……

あれっ? なんか全然怖くないぞ……⁉︎

……と言うか、ダートを走っている気がしないくらい平和だ(笑)

良い意味で、オンロードを走っている時と何ら変わらないくらい未舗装路が走りやすい!

……でも、なんでだ?

Vストローム800DEのタイヤは、確かにパターンはセミブロックだけどオンロード寄りのタイヤだったはず?

アスファルトよりも、ダートは小さい砂や石だらけで滑りやすい路面のはずなのに、フラットダートくらいならオンロードと同じくらい平然と走れるし、ブレーキングも思っていた位置でしっかり停まってくれるから、未舗装路の走行でも不安が全然ないんです。

純正タイヤはダンロップ製のTRAILMAX MIXTOURを標準で履いていますが、パターンやトレッドなどはVストローム800DE用に専用設計されたオリジナル。

リアタイヤの縦方向の溝(グルーブ)に関しては、舗装路での安定性アップを狙って逆に幅を狭めているパターンになっているとのことですが、フラットなダート路面なら問題なくグリップします。

しかしながら、オフ向きの完全なブロックタイヤではないのは確か。

そうなると、やはりストローク量が長くてしなやかな前後サスペンションと、フレーム&車体などの「総合的なスタビリティ」が抜群の安定性を生み出しているとしか思えないんです。

未舗装の滑りやすい路面状況の時って、ホイールインチやサスペンションストローク以前に、タイヤが路面をしっかり捉えてくれることが、まずは肝心だと思うんですけど、このタイヤと足まわりはしっかりと接地感が感じられたんです。

フロント21インチやストローク量の長いサスペンションももちろんですが、車体の完成度が高いからこそ、オンロード寄りのセミグロックタイヤでダートを走っても安心感のある走りができるようになっているんですね。

仮に、このディメンションでオフロード寄りのブロックタイヤに履き替えたとしたら、さらに未舗装路の走破性が上がると思います。

未舗装路でも格段に乗りやすくなる電子制御システムが走りをサポートしてくれる

Vストローム800DEで未舗装路を走れば走るほど、不安要素がいつの間にか消えていて、走りやすさだけがどんどん増して来ました。

気になっていた230kgという車重も、普通に走っているだけなら気にならなくなるくらい軽く感じられ、まるで400ccクラス、もっと言うと250ccのオフロードバイクかと思えるくらいに扱えるようになって来るんです。

アスファルトと同じように未舗装路でも不安なく走れてしまうことが分かれば、あとは楽しくてしょうがない(笑)

そうなると試してみたくなるのが、Vストローム800DEに新たに搭載された「STCS(スズキトラクションコントロールシステム)」の「Gモード」です。

性根がオフロード好きな筆者ですので、まずはこれを試してみなくては!

ほどよいホイールスピンまでを許容してくれる「Gモード」

このトラクションコントロールシステムはリヤタイヤのホイールスピンを検出した際に、エンジン出力を自動的にコントロールして、パワーをより効率的に駆動輪に伝えてくれる、ありがたい電子制御システム。

主に舗装路でのトラクション性能を手助けしてくれる電子制御システムなのですが、Vストローム800DEには、トラクションコントロールの介入レベルを「3モード(+OFF)」に加え、ほどよいホイールスピンまでを許容してくれる「Gモード(グラベルモード)」から選べるようになっています。

ダート走行を楽しむライダーの中には、コーナリングなどでリアタイヤを意図的にスピンさせた“テールスライド”と呼ばれる走り方をすることがあるのですが、これを電子制御システムでコントロールしやすくしてくれるのが「Gモード」です。

ダート走行においてはコーナー立ち上がりで加速したい時などに有効ですが、アグレッシブな走行を楽しむためのパフォーマンス的な要素もあって、単純にこれができると超カッコイイ!

ただ、重量のある大型アドベンチャーでは、それなりのテクニックを要するのですが……ここは思い切ってトライしてみるしかないでしょう!

恐る恐るですが、Vストローム800DEの「Gモード」を信じて、コーナリングで意図的にアクセルを大きめに回しながら車体を傾けてみると……

「ギュルギュルギュルッ……!」

リアタイヤのトラクションが薄れはじめてリアタイヤがスピンしながらスライドした……と思ったら、程よいスライド加減でトラクションコントロールが介入!

おぉ‼︎ 恐っ……くない?

リアが滑ったと思ったら、ほぼ“電子制御任せ”で滑っていたタイヤのトラクションが戻って、体勢を立て直しながら路面をしっかりと捉えてくれます。

た、楽しい……。車重のある大型アドベンチャーなのに、ホイルスピンが怖くないどころか、マシン任せでスライドコントロールができちゃうなんて!

ちなみに、ちょっと小耳に挟んだことですが、Vストローム800DEの開発段階では、このGモードの設定は当初予定されていなかったらしいのです。だけどテストライダーや開発スタッフからテールスライドも楽しめるような“グラベルモード”の設定を切望されたことで、実際に搭載が決まったようです。

開発現場からの意見や要望をしっかりとカタチしてくれるのが、なんともスズキらしいですね!

実際のところ、未舗装路の林道ツーリングでも、意図的でなければテールスライドをするような機会はほとんどないけれど、ちょっとリアが滑っても体制が立て直せる「Gモード」の安心感、半端ないです。

また、リアのABSモードもオフにできるので、意図的にリアタイヤをロックさせることもできちゃいました。

未舗装路の路面状況によってはリアのABSが効きすぎると、逆にギクシャクして停まりにくい時もあるので、これもダート走行を楽しむのにありがたい機能です。

早くも“名車”の予感!オフ好きライダーが選ぶVストロームシリーズ最強の冒険バイク

ワインディング編でも感じたことですが、Vストローム800DEは、未舗装路に有利なフロント21インチや長いサスペンションストロークを備えていても、オンロード性能を損なうどころか、大径ホイールの常識をひっくり返すほどコーナリングが楽しめるマシンに仕上がっていました。

さらに、ツーリング先で見つけた未舗装路で「この先、行ってみたいけど……やめておこうかなぁ」と思うようなシチュエーションでも、Vストローム800DEなら「まだ行けるかも!」って冒険心を引き立てくれるほどダート性能が高いんです。

(下に続きます)

Vストローム800DEは「オンロード寄り」「ダート寄り」と言う区分で分けるのではなく、どちらも同じくらい楽しめるようなマシンであるからこそ「デュアル・エクスプローラー」と名付けられているんですね。

スズキのVストロームシリーズに、さらなる冒険バイクの名車が誕生したんだなぁ、と思っています。

よろしければ最初の【解説編】からお読みくださいね!

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