ワインディングもダート走行も、これまでのVストローム1050シリーズとは大きく違うキャラクターで攻めてきた1050DE。このバイクは『旅バイクの本質』を体現しているかもしれません。

ロングツーリングバイクにおいて最も重要なこと

オンロードのワインディングではこれまでのVストローム1050シリーズにはない優しさを披露して、ダートでは圧倒的な安定感を見せつけたVストローム1050DE。

今回走ってみて、いま感じていることをシンプルにまとめると、Vストローム1050DEは『正しく“ロング”ツーリングバイクとして進化した』ということでした。

そう感じる理由の最たるものはやっぱり『疲れないこと』です。

もちろん最初の“足つき編”でお伝えした通り、シート高880mmはそれなりに乗り手を選びますし、バイク自体が巨大なので扱いに苦労するシーンもある。純正オプションにローシートの設定があるとはいえ、一定以上の体格が要求されることは事実です。

だけど、それをクリアできるライダーがこのバイクに跨って、クラッチをつないで走り出してしまえば、その後はまさに極楽。全スズキバイクラインアップの中で最上級の快適さが約束されます。

特に、足を地面に着く機会の少ない高速道路では、これまでのスズキ車にはない極上の時間を味わうことができるんです。

252kgの重量級ボディと剛性たっぷりのアルミ製ツインスパーフレームが生み出すどっしりとした安定感は間違いなくスズキ車の中で随一。

ちなみに言っておくと直進安定性などにも関わってくるホイールベースは1595mmで、これは2023年8月現在のスズキのバイクラインアップの中で最も長い数値になります。

その安定感があるうえで1050DEは『スズキのVストローム』として、さらにオンロードでの走りを追求してる。

前後サスペンションはワインディングやダート路面でも抜群に良い仕事をしてくれましたが、高速道路で感じる乗り心地の良さはそれ以上です。もはやちょっとした感動レベル。

路面の継ぎ目を綺麗に吸収してくれて……とか、そういう次元じゃありません。なんかもう『地面からちょっと浮いてるんじゃないの?』 と思うくらいの極上でした。

盤石のどっしり感と直進安定性は時速100kmの速度でも完全なリラックスを生み出し、レーンチェンジの際の動きも優しい。

そこに加えて、エンジンのパワーフィーリングに豊かさがある。

それは瞬間的な速さがうんぬん、というより『パワーが湧き出してくる』といった印象で、乗り手をスピードで疲れさせることがありません。Vストローム1050シリーズの総排気量は1036ccなんだけど、体感的に1200ccクラス、あるいはそれ以上の“余裕感”を感じます。

仮に「1日に1000kmを走れること」をロングツーリングバイクの指標とするなら、私(北岡)の個人的感覚で言うとVストローム650やVストローム800DEだってそれは達成できると思います。もちろんGSX-S1000GTだって普通にいける。

だけどその距離を走った後の身体の負担は、間違いなくVストローム1050DEがいちばん少ない。

イメージとしては超早朝に東京を出発して、福岡県まで一気に走ってから、夜に博多の街をブラブラする体力的な余力が残ってる感じ。

このバイクは『1日1000km走ること』がゴールじゃないんです。Vストローム1050DEなら『1000km走った後のこと』まで考えられる。

そして、この感覚はスズキのバイクラインアップの中で唯一のもの。Vストローム1050DEだけのものだろうと予想しています。

Vストローム1050DEはフロントホイールを21インチ化したことで、オフロードでさらなる冒険性能を手に入れた。それは間違いないです。

だけど私が思うVストローム1050DEの最大の魅力は、大径ホイール装着とそれに合わせた車体のセットアップによって生み出された『優しさ』です。乗り手をとことん疲れさせずに、とんでもない距離を走らせてくれるバイクに進化してる。

Vストローム1050シリーズはこれまでも「スズキのフラッグシップツアラー」でした。

だけどスズキのラインアップには奇跡の650cc『Vストローム650』が存在するし、新鋭の『GSX-S1000GT』もその名の通りのグランドツアラーだし、なんなら『隼』だってあなどれないツーリング性能を発揮するので、旅バイクの選択肢は他にもあるように感じられていました。

けれど、それはもう過去の話です。

Vストローム1050DEの『長距離を走る能力』は圧倒的です。スズキのバイクラインアップにおける『ツーリングの快適性』に関しては、このバイクが頂点だと断言できる。

角目1灯の武骨なスタイルに、地の果てまで走っていける最高峰のロングツーリング性能。これぞ男の旅バイク決定版という他ありません。

ただし!

(下に続きます)

たぶん、このバイクのオーナーになると距離感がおかしくなるのでご注意を。仲間と一緒にツーリングするときは“手加減して走る”ことを心掛けましょう。

くれぐれも『仲間を置いてけぼり』にしてしまわないように、十分な配慮して走ってくださいね!

よろしければ最初の『足つき編』からお読みくださいね!

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