初見で「まったりツーリングバイク」に感じたGSX-S1000GXが、ついに秘めたスポーツ性を開花させた! と思ったんですが、どうやらそれはまだ『序章』に過ぎなかったみたいです……

GSX-S1000GXの本領を発揮させるためには……

スズキ初の電子制御サスペンション……なかなかに手強いというか難解というか……

ここはもう正直に言ってしまいます。たぶんこのバイクは『1日乗っかった程度じゃ魅力がまるでわからない』というタイプです。

私(北岡)も今回、ワインディングを走った後に500kmくらいツーリングしてみて「ようやくその取っ掛かりを得たかな?」といったレベルですから。

ともあれ、先の【ワインディング編】において、電子制御サスペンションを『普通コレやらないでしょ』というセッティングで実験をしてみたところ、GSX-S1000GXが一気にスポーツ性を解放しはじめました。

ただ、その時点で感じていたのは、まだ氷山の一角だったんです。もう十分にスゴいと思っていたにも関わらず……

改めてを峠道を走った印象は『GSX-S1000GT』に近いスポーツ性を持ってるな……というものでしたが、先の【ワインディング編】の最後にお伝えした通り、GXにはまだ先がある。その領域ではGTを超える走りを披露する可能性を残しています。

でもそれより手前で(難しいサスペンションセッティングの話を抜きにして)、このバイクには『別の顔』がいくつもあったんです。

まず、改めて高速道路の話ですが、ワインディングにおいて『スポーティな走りができるセッティング』を見出すことによって、逆に際立つものが出てきた

ちなみに防風性とか乗り心地などのツーリング快適性は極上レベルです。控えめに言って1日1000km走れますので今回は深く言及しません。

今回、注目するのはそこじゃなくて……

【ワインディング編】で試したセッティングの真逆とも言える「最もまったり」になるセットの話です。特にオートマチックリヤサスペンションモードを“AUTO”にした時のこと。

このモードにするとGSX-S1000GXはかなりの「優しいバイク」になります。それこそ豪華客船のようなゆったり感と乗り心地。

最初はそれを『スズキらしくないなぁ……』なんて感じていたものですが、電子制御サスペンションのセッティングによって『スズキのスポーツバイクらしさ』を発露させられることがわかった今は、話が大きく違ってきます。

その快適性を、逆にぬるま湯の温泉にでも使っているかのごときリラックス感だと思えるようになった。自分の中で変化が起きたんです。

各モードを使い分けることでGSX-S1000GXはより活きてくる、といったところでしょうか。

特にそれを強く思ったのは「ツーリングでよくある」交通量もそれなりの一般道を流している時でした。

のんびりペースで走って、でも前後のクルマにペースは支配されていて。信号での停止や、交差点を曲がることもちょくちょくあって。

これは私(北岡)の個人的な感覚かもしれませんが、リアサスペンションを“AUTO”にしておくと、そんなシチュエーションですら、ちょっと「まったり感が強すぎ」だと感じます。

そこで辿りついたのが……

このセッティングでした。

エンジン出力はもっとも抑えられているC(Comfort)モード。これにしておくと、クルマのペースに合わせて走るストレスを感じません。雨天や荒れた道でも威力を発揮すると思うけど、普通に流す時もけっこういい。

そこにまた『一人乗車なのに二人乗りモード』を上乗せ!

そうする理由は先の【ワインディング編】を参考にしてもらうとして、このセッティングで『軽快にヒラヒラ動くけど、エンジンは扱いやすい』というツーリング仕様のGXが一丁上がりとなります。

まっすぐ走るときはAD(アクティブダンピングコントロール)はS(ソフト)でOK。そのほうが乗り心地がいいし。

で、走っていて市街地区間からワインディングというほどじゃないけど曲がりくねった道(海沿いとかによくある感じの道)に差し掛かったら……

アクティブダンピングコントロールだけをM(ミディアム)にポチッと変更。

S(ソフト)のままだとアクセルを開けた時にサスペンションがついてこれなくなります。走りがなんだかユラユラする感じ。でもMに変更した途端、その違和感が消えてなくなる。

私の個人的「ツーリングモード」はこれでした。

というか、ですね……

これ言うとスズキさんに怒られそうな気がするんですけどね……

GSX-S1000GXの電子制御サスペンションって、

ボタンひとつで『キャラ変わりすぎ』だと思うんだよ(笑)

だから各モードでサスペンションがどういう動きかたをするか? を、身体(もしくは感覚)が理解するまではGXをどう扱っていいかわからなくて迷っちゃう。

逆に(恐る恐る)言うと『電子制御サスペンションをきちんと使い分けないと楽しく走れないバイク』だとすら感じます。

ただし……

それは裏を返すと『自分セッティング』が見つかった時に「いかなる環境でも走りを追求できる」という事と同義でもあります。ある意味、既存の電子制御サスの超えた楽しみ方ができる。

言うなれば「電子制御に頼りすぎない電子制御サスペンション」といったところでしょうか……こういう狙いの電子制御サスペンション、今までに経験したことがありません(汗)

そして「GXの電子制御サスペンションがどういう動きをするか」を身体&感覚が覚えると次のステージの扉が自動的に開く……そのことを今回のツーリングの『まとめ』として、最後にお伝えさせて頂こうと思います。よろしければもう少々お付き合いください。

だってね、最後に走った道で……GXがちょっとスゴかった!?

【文/北岡博樹(モーターマガジン社)】

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