高速道路やツーリングシーンを経て、ちょっとずつわかってきたGSX-S1000GXというバイクの本性。そしてこのツーリングの最後に走ったワインディングで感じたものって何だと思う?

500km以上の距離を走った後に……

ワインディングからはじまって、高速道路やらツーリングシーンまで。今回はGSX-S1000GXで500km以上の距離を走りました。

ちなみに内訳でいうとざっくり半分くらいが一般道。ネタバレしますが、東京発→伊豆一周が今回のコースでした。ちなみに西伊豆側から反時計まわりにぐるっと一周してます。

伊豆方面を走ったことのある人ならわかる話だと思いますが、私はこのツーリングの最後に伊豆スカイラインをルートに組み込みました。それも全区間、延長約40kmにも及ぶワインディングルートを今回のハイライトとして設定してみたんです。

そして旅の終盤、伊豆スカイラインを走った時、むしろ自分に驚きました。

このツーリングの【ワインディング編】でGXのスポーツ性について私は触れています。その中でドライブモードSDMS-αをA(Active)モードにすると「パワーありすぎて身体が置いていかれちゃって……」と言っています。

でもこの時点、GSX-S1000GXの電子制御サスペンションの各モードの動きの傾向、あるいはクセを身体が覚えた後では、また話が違ってきた。別に難しい話じゃないです。長い時間このバイクに乗れば、誰だって勝手に身体が覚えてくれるので。

そういう状況で、私(北岡)が最終的に伊豆スカイラインを走るときに使っていたセッティングは……

……まさかのコレ。

なんとフルパワーのAモード……まずそれが自分でも信じられません。そして電子制御サスペンションはなるべく車体をクイックに動かせるようにセット。サスペンションの感覚が身体に馴染んだ今は、先の【ワインディング編】の時点とは(自分の話ですが)別のライダーが乗っているも同然でした。

ああ、ちなみにTC(トラクションコントロール)の介入度が4(Aモードのデフォルトは3)なのは単純に私がビビリだからです。

ですが、そんなことは些細な問題。

私、久しぶりに伊豆スカイラインを全区間走ったんですが……最初から最後まで(自分の運転技術レベル内で)集中力を切らさずに一気に走り切れてしまって。

通常はツーリングも終盤になると疲れが溜まってきて、ワインディングも穏やかに流すケースが多いのですが……今回は違った!?

今回のツーリングで、いちばん楽しかったのは間違いなく最後の伊豆スカイラインでした。GSX-S1000GXというバイクを最も堪能できた、と言い換えてもいいかもしれません。

それがもう本当にスゴくて……前後17インチってこんなに正確に曲がるの!? ってビックリしてるうちに約40kmのワインディングが夢のように走り終わちゃった感じ。私は今までフロント19インチのアドベンチャーバイクに(コーナーでも)特に不満を感じたことが無かったのですが、今後はすこし判断基準が変わってきそうです。

そして、車体(電子制御サスペンションを含む)に慣れた後に感じていたのは……

スーパースポーツGSX-R1000譲りのエンジンの凄まじさ、でした。

フルパワーAモードでのそれは間違いなくスーパースポーツの加速力。あっという間に次のコーナーが迫ってくる。そして、その中には明らかに『GSX-Rの遺伝子』が感じられます。

まぁ、真に驚くべきは「それを感じていられる余裕」があったことかもしれませんが……それはGXが与えてくれたものだと思っています。

そして、それでもまだこのバイクには先があると感じているのが何より恐ろしいところ……

【ワインディング編】でも言いましたが、身体と感覚が『GXの動き』に馴染んだ後に、さらにユーザーモードを駆使して自分好みのサスペンションセッティングを見つけられたとしたら?

これちょっと……どういうレベルの走りにまで到達できるのか想像がついてません。現状で既に十分すぎる。もちろんセッティングを追い込むのもそのうちやってみるつもりですが、今は単純にGXが『それほどのもの』なんだと思っておいてもらえると嬉しいです。

あと、もうひとつ感じているのは!

このバイクはひょっとして荷物ギュウギュウ詰めのパニアケース付き状態とか、もしくはタンデムこそが真骨頂なのではないか? ということです。

今回はパニアケース無し状態でしたし、タンデムはそもそも後ろに乗ってくれる人がいないのが大きな問題ですが、その状態で走ってみたい、と強く感じています。

通常だと荷物満載の状態とかタンデムの時っていうのは、ワインディングでスポーティさを味わうことを「諦める」のが普通です。今はそういう楽しみかたをする時じゃない、と割り切って考える。

スズキのフラッグシップツアラーと言える『GSX-S1000GT』や『Vストローム1050シリーズ』でも間違いなくそうなります。

だけど……たぶん……

そういった状態でもGXなら、安全マージンを確保したまま、限りなく走りを楽しめる気がするんです。これは予感ですが、おそらく間違っていないと思う。

GXの電子制御サスペンションの威力を十分に吟味した、そのうえでの感想です。そして、それこそは機械式サスペンションでは到達できない領域なんだろうな、と。

もちろん厳密に言えば、サスペンションのセッティングを変更すればいいのでGTやVスト1050でも不可能ではないでしょう。だけど普段のバイクライフの中で、いちいちそれをやるのは面倒すぎて……ぶっちゃけ私はやりません。

だけどGSX-S1000GXならボタンひとつで、あるいは自動でそれをやってくれる。

だからこのバイクに対してまだ『底が知れない』と感じている次第。限度・節度はあるにせよ、例えばタンデム&荷物満載でワインディングをスポーティに走ろうなんて、これまでは考えもしなかった。でも、GXならそれも『楽しそうじゃない?』なんて思えてくる……

それに、ユーザーモードを使ってフロント側のセッティングをもう少し詰めた『俺ワインディング仕様』も本気で作ってみたい!

やりはじめたらキリがない気もするけど(笑)

ともあれ!

GXに残された様々な可能性については、また後日のお話。

今の時点で言いたいことは……

このバイクなら150馬力のパワーに対しても怯まない、ということ!

実際の話、私は今回『今まで乗ったGSX-S1000シリーズ』の中で、最もこの150馬力エンジンを堪能できた、と感じているんです。

(下に続きます)

もちろんそのパワーをすべて使いきれる訳ではありません。ていうか公道では無理よ(笑)

ただ、満足感で言えば、かつてないほどに『いい感じの走り』ができたと思っています。

だって最後の伊豆スカイライン……

めちゃくちゃ楽しかった!!!

前後17インチならではの強い旋回性と突き抜ける4気筒フィーリング……あの快感、しばらく忘れることができなさそう!?

【文/北岡博樹(モーターマガジン社)】

よろしければ【前編】からお読みくださいね!

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