パワーも車格も横綱級のアルティメットスポーツ「隼」は、やっぱり乗り手を選ぶほどの手強いマシンなのでしょうか?今回は隼の車格やディメンションを徹底チェックしてみたいと思います!

車体の迫力に圧倒される「隼」はやっぱり乗り手を選ぶバイクなのか?

スズキのフラッグシップに君臨し続けるアルティメットスポーツ「隼」。

2021年3月にフルモデルチェンジされ、三代目「Hayabusa」として世界中で愛されている唯一無二のバイクであることは、当サイト「スズキのバイク!」をご覧の皆様ならご存知のことと思います。

そんなスズキが誇る究極のバイクだけに、乗りたい憧れはありつつも「速すぎて手強いのでは?」「上手い人しか乗りこなせないんじゃ?」「憧れるけどデカくて重そう……」など、大型バイクに乗り馴れたベテランライダーしか操れないような“乗り手を選ぶマシン”と言うイメージが先行しているかもしれません。

現に筆者の私(岩瀬)も「カッコいいけど、乗りこなすのは無理そう……」と感じていましたし……。

しかし、実際に乗ってみるとその見た目からは想像できないくらいの扱いやすさにビックリし、隼ほど乗る前と乗ったあとで印象がガラリと変わったバイクははじめてだったんです。

なんて言うか、見た目の大きさや性能以上に、乗り味がとことん優しいんですよ。

ですから、以前の私と同じように、見た目の印象だけで乗るのを躊躇っているライダーに「本当の隼」をもっと広めたい!と思いましてこの記事を書かせて頂きます!

隼は数字的にもやっぱりデカいのか?1000ccクラスのバイクと比較してみると……⁉︎

そこでひとつ疑問が湧きました。

隼は確かに大きく感じるけど、本当に「他の1000ccクラスのマシンよりも明らかに大きいのか?」ということです。

空力特性を高めるボリューム感のあるフルカウルなどに圧倒されるけれど、これはきっと“デザインの妙”なんじゃないかって思えてきたんですね。

そこで今回はスズキの1000ccクラスにラインアップされる「KATANA」や「GSX-S1000」の1000ccロードスポーツモデルとスペックやディメンションを数値的に比較してみたいと思います。

全長とホイールベース

まず、隼の全長は2180mmで、迫力ある見た目に違わずかなり長めです。

対するKATANAは2130mm、GSX-S1000は2115mmで、隼に比べると全長はそれぞれ50〜65mmも短い結果に。

全長に関してはデザインやスタイルの違いも大きいですが、やはり1339ccの隼は他の1000ccクラスと比べてもひと回りくらい大きい造りになっているのでしょうか?

しかし注目なのは、直進安定性や旋回性などバイクのスポーツ性能や運動性能などにも大きく影響する「ホイールベース(軸間距離)」の数値。

見た目からして軸間距離もけっこう長そうに見える隼のホイールベースは1480mm、KATANAとGSX-S1000は共に1460mmで、実は数値的にはたった20mmしか違わないんです。

フルカウルと長めの全長で車格が大きく見える隼も、実際の数値で比べてみるとホイールベースは1000ccクラスのスポーツバイクと大差がないことがわかります。まぁ、このあたりの数値は数ミリでも走りに大きく影響が出る部分ではありますが……

ライディングポジションと足つき性

ライダー身長:172cm

続いてはライダーが実際に跨った時のライディングポジションと足つき性を比べてみます。

スズキ最大排気量のアルティメットスポーツらしく、ライディングポジションはそれなりの前傾姿勢になるのですが、セパレートのハンドル位置が先代モデルより20mm手前(ライダー寄り)になったことで、思ったよりも手首やハンドルを持つ腕に力が入りにくい自然な姿勢を保つことができます。

また、大型ツアラーとしての顔も持ち合わせる隼は、ロングツーリングでも快適に走れるように一般的なスポーツバイクに比べるとシート形状が幅広く、角度も水平に近くらいフラットな形状にデザインされています。

このフラットめなシート形状のおかげで、身体が前方にズレてくることが軽減されるので、リラックスして走らせることができ、上半身に余計なチカラが入りにくく、長距離でも疲れにくい形状になっている印象です。

また、足つき性に影響する隼のシート高は800mmで、大型スポーツバイクとしては「低い」と言える数値になっています。

実際、身長172cmのライダー(私)が跨ってみても、両足の場合でかかとが少し浮く程度。足つき性には特に不安がありません。片足ならかかとまでべったり地面に着くことができるので、渋滞や信号待ちなどで頻繁に足を着くようなシチュエーションでもむしろ快適なほどでした。

ちなみに、スズキの他の1000ccクラスのシート高と比べると、KATANAは825mm、GSX-S1000は810mmで、なんと数値的には隼が一番低い結果に!

足つき性に関してはシート高の数値以外にも車体やシートの幅だったり、前後サスペンションの沈み具合など色々な要素が関係してくるので、見た目だけで「自分には無理そう……」と思わずに、実際に販売店などで跨ってみるのが一番かもしれません。

キャスター角とトレール量

続いてバイクの旋回性やスポーツ走行に大きく影響する「キャスター角」と「トレール量」をチェックしてみます。

まず、隼のキャスター角/トレール量は23°/90mm。

対するKATANAとGSX-S1000は共に25°/100mmで、むしろキャスター角は隼が2°ほど立ち気味になっているのが意外でした。さらにトレール量が10mm短くなっていて、どちらかと言えば「旋回性を優先した造り」になっているのが伺えます。

全長が長くて大柄に見える隼が峠のコーナリングでビックリするほどクルクルと曲がるのは、絶妙のキャスター角/トレール量の設定が大きく影響しているのでしょう。

車重と車体の取り回し

続いてはバイクを押し引きするとき時に感じる重さや動かしやすさに関係してくる「車両車重」と「取り回し」についてもチェックしてみます。

まず、隼の車両重量(装備重量)は264kgで、数値的にも車格に見合った重量があります。

対するKATANAは215kg、GSX-S1000は214kgで、この2台の1000ccクラスのスポーツバイクとは約50kgも差があり、数値的にはさすがに横綱級ビッグバイク。

ただ、隼の車体を実際に押し引きしてみると、ズッシリとした重さは感じるものの、264kgもの塊を動かしている感覚はなく「他の1000ccクラスよりちょっと重いかな?」くらいに感じるのが不思議なところ。

少し傾斜のある地面だと押し引きに重さを感じた場面もありましたが、駐輪場などから動かすのを躊躇ってしまうほどではなかったのでむしろ安心しました。

ハンドル切れ角と最小回転半径

また、バイクを動かす時に意外に見逃しがちなのが、車体の「ハンドル切れ角(舵取り角)」と「最小回転半径」です。

ハンドルを左右どちらかにフルロックしたときの角度を示すハンドル切れ角は、Uターンや小回り、低速時の方向転換などにも影響し、角度の数値が大きければ車体の取り回しやすさにも繋がります。

ちなみにハンドルをフルに切って極低速で走ることもあるオフロードバイクはハンドル切れ角が45〜50°くらいと大きく、一般的なロードスポーツは35°前後が平均くらいでしょうか。

そんな隼のハンドル切れ角は30°で、対するKATANAは29°、GSX-S1000は31°なので、セパレートハンドルかつ車格の割に他の1000ccロードスポーツと大差ない数値になっています。

またハンドル切れ角やホイールベースなどは、ハンドルをフルロックした状態で車体を動かした時の「最小回転半径」にも影響し、同時にUターンや小回りのしやすさに繋がります。

隼の最小回転半径は3.3mで、対するKATANAは3.4m、GSX-S1000は3.1mになっていて、実は大柄に見える隼も他の1000ccロードスポーツと同等なくらいに小回りができるバイクでもありました。

ロードスポーツのバイクでハンドルをフルロックして走ったりするケースはあまりないかもしれませんが、隼はその大柄の見た目とは裏腹にUターンやバイクの押し引きを躊躇ってしまうほどではない……というのが隠れた『隼のスゴいところ』です。

隼は誰にでも扱える優しさを秘めている

「隼」はスズキが誇る唯一無二のアルティメットスポーツだけに、「隼=取り扱いが大変」と思っているライダーは少なくないかもしれません。

確かに「市販車で300㎞/h出る!」とか「ギネスブックにも載った世界最速のバイク!」「1300ccオーバーのメガスポーツ!」など、あまりにもスゴすぎるイメージが先行していますからね……

(下に続きます)

でも、こうやって他の1000ccクラスのバイクと比べてみると、その大柄な車格に躊躇しなくても大丈夫であることがわかります。

しかしながら、数値と実際に乗ってみるとではまた違うところがバイクの奥深さと面白いところ。

次回は隼を関東屈指のワインディングロードへ持ち込んで、コーナリング性能を検証してみたいと思います!

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