スズキは『スペックの数字』よりも『実際の走り』を優先する
DR-Z4SMをざっくばらんにカテゴライズすると排気量400ccのスーパーモタード、ということになります。
そしてスーパーモタードというのはバイクのジャンルとしてはちょっとマニアックな部類。フルカウルスポーツでもネイキッドでもない、軽量なオフロードバイクをベースにしたオンロードスポーツと考えるのがわかりやすいでしょうか。
実際のところスーパーモタードのレースでは未舗装のダートセクションなどが設けられることがあるので「純粋なオンロードスポーツ」とは違うところもありますが、それでも一般公道を走る大多数のライダーにとってはオンロードがメインになるはず。
なのでここでは基本的にDR-Z4SMをオンロードバイクとして扱います。
で、ここからようやく本題ですが……
なんでスズキは排気量400ccのスポーツバイクとして『スーパーモタード』というジャンルを選んだのか? を疑問に思ったことありませんか?
だって、走りに特化したバイクをつくるならフルカウルのスポーツバイクが(ユーザーに対して)一番わかりやすいはずです。
この部分について、私(北岡)の勝手な推測に過ぎませんが、スズキは『排気量400ccという制限の中ではスーパーモタードがスポーツバイクの最適解のひとつ』と考えたのかも……なんて思っています。
ご存じの通りですがスズキは徹底して『軽さにこだわる』メーカーです。そのうえでスペック上の数値よりも実際に乗ってどうなのか? を重視する。
それらを加味したうえで『スズキが本気で400ccオンロードスポーツ』を作るとこうなる、というのがDR-Z4SMなのではないか……
その『本気の一端』を現わしていたのが昨年2025年に行われたメーカー試乗会です。その試乗会はサーキット&オフロードコースで行われました。
実はこれ、けっこう珍しいことです。ここ10年くらいでスズキが完全なクローズドコースで試乗会を行ったのは、2017年発売の先代GSX-R1000Rくらいしか思い当たりません。
試乗会をサーキットで行った。それ自体がまず、スズキの『本気度』です。
実際に乗って『本当に速い』のひとつのカタチ
ぶっちゃけた話ですが、排気量400ccで本気のスポーツバイクを作るなら「高回転型の4気筒エンジンを積んだフルカウルスポーツ」が幅広いライダー層に対して、いちばんウケが良いです(笑)
でもそれは一歩間違うと『一部の上級者にしか性能を引き出せない限定的なバイク』になっちゃう。
スズキは『そういうバイク』をあまり好みません。先日のGSX-8Rの時にも同じことを言いましたが、スズキは常に『我々のような普通のライダーが公道で乗ること』を想定します。
そこで選ばれたのが本気のスポーツ性能を持たせつつ、みんなが楽しんで乗れるスーパーモタードだったのかも……
そんなバイクなので、DR-Z4SMは公道のワインディングを走らせても『めちゃくちゃ速い』です。排気量こそ400ccですが正直に言って、公道で走らせるには『速すぎる』と感じるくらい。
モタードらしく、コシがありつつもしなやかに動く前後の足まわりは路面の荒れにも幅広く対応。単気筒エンジンならではの力強さとピックアップの鋭さを、ワイドレンジな5速ミッションでイージーに扱う。
数字としてのエンジン最高出力は38馬力ですが、実際の走りは『38馬力のバイク』の枠から完全に逸脱しています。
じゃあなぜ、そんな走りができるのか?
その答えとして、私(北岡)の中に導き出されているのは『最高出力38馬力』は走りを構成する一要素でしかないから、というものです。
最高出力自体も大事だけど、最重要ではない。
それよりも『エンジンをどう使うか』あるいは『ライダーが使えるようにするか』のほうが重要視されていると感じる。
(下に続きます)
そして、それこそが名車と名高い『先代DR-Z400SM』との最大の違い。
キャブレター車の先代モデルでは真似することが困難な『エンジン性能を余すことなく引き出す走り』へのアプローチ。
馬力じゃない。最高速じゃない。
スズキ流400ccスーパースポーツDR-Z4SMの最大の魅力。おそらくですが、それは『アクセルの開けやすさ』にこそあるのではないか? と私は思っているんです……