公道用の量産市販車のアルミフレーム初採用は、言わずと知れた? あの1台です
世に流通している多くの2輪関連書籍には、量産市販車のアルミフレーム採用は、1983年のスズキRG250Γが初……と記されていると思います。
一方、ロードレースの世界では1980年代に入る前から、スチール製よりも軽量なフレーム造りへのアプローチとして、さまざまな人の手によりアルミ合金を使ったフレーム製作が行われていました。
スズキは世界ロードレースGP(現MotoGP)500ccクラス用ファクトリーマシンに、1981年シーズン中からアルミフレームを採用していましたが、これはスズキ製ロードレーサーとしてのアルミフレーム初採用ではありませんでした。じつはすでに1960年代には、スズキはアルミ合金をフレームに使い、ロードレースの世界で成功をおさめていたのです。
採用の目的は……軽量化の追求でした
1962年以降、サイドカークラスを除く世界ロードレースGPは50cc、125cc、250cc、350cc、そして500ccという5クラス開催の時代が長く続きました。
第一期GP活動期にあたる1960年代、スズキは小排気量の50ccおよび125ccを主戦場として、両クラス合わせて7つのライダータイトルを獲得しました。
すべてのレーシングマシンにとって「軽さ」は大事な要素ですが、大排気量車に比べるとはるかに非力な50ccおよび125ccマシンは、より軽さが重要視されます。
そこでスズキチームは、更なる軽量化の手段としてスチールパイプの代わりにアルミ合金のジュラルミンパイプを使って、1965年シーズン用50ccマシンのフレームを作ったのです。
スズキ製ジュラルミンフレームを採用するRK65は、1965年の日本GP(鈴鹿サーキット)にてデビュー。1966年シーズンにスズキは50ccのRK66のほか、125ccのRT66にもジュラルミンフレームを採用(鉄フレームも用意して併用)。
鉄パイプよりも太いジュラルミンパイプを使うことで強度・剛性を保ちつつ、大幅な軽量化を果たすことができましたが、鉄よりも溶接性が悪いジュラルミンの特性ゆえに、フレーム製造には大変な苦労があったそうです。
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1967年シーズン限りでスズキは、世界ロードレースGPでのファクトリー活動を一旦停止することになりました。
そしてスズキ製アルミフレームの系譜も、一旦途絶えることになるわけです。
しかし、速さを追求するために軽量なマシンを作るというフィロソフィーは、1970年代以降もスズキ製スポーツモデルに脈々と継承されていくことになったのは、周知のとおりです。