写真・文:岩瀬孝昌(編集部)
バイクの好みは生まれた世代や育った環境なども大きく影響する?
新旧カタナのどちらにも言えることは、カタナだけが持っている「唯一無二のデザイン」と「カタナに乗っているんだ」っていう圧倒的な所有感があることでしょう。
1980年のケルンショーでプロトタイプが発表され、1981年秋に市販化された「GSX1100S カタナ」。
スズキのバイク好きにとっては、もはや説明不要のレジェントバイクです。
だけど、ちょうどその頃に生まれた著者の私(岩瀬)は、先代モデルの「カタナ」のことを“よく知らない世代”にあたるかもしれません。
もちろん、カタナシリーズを所有している先輩や友達はいましたし、今でも乗っている方も多いと思います。
「ケルンの衝撃」と言われたほど世界を震撼させたレジェンドバイクだってことは、雑誌や先輩などから聞いて知っていましたが、乗ったことはありませんでした。
ただ、他のバイクとは違う、何か「特別な存在感」を放っているバイクだなぁ…と思っていたのを覚えています。
筆者の私(岩瀬)がバイクの免許を取ったのが90年代後半。
いわゆる“アメリカンクルーザーブーム”が少し落ち着き始めた頃だったでしょうか。
生まれが東海エリア出身ということもあり、周りの先輩や友達はほとんどアメリカンクルーザータイプのバイクに乗っていました。
比較的、周りの影響を受けやすい私も、当然のことのようにアメリカンクルーザータイプのバイクから乗り始めました。
どちらかと言えば、バイクで峠へ走りにいったり、荷物をたくさん積んで遠くまでツーリングへいくようなタイプではなく、スポーツ性能や乗りやすさは二の次。
見た目のカッコ良さがもっとも重要で、いわゆる「格好から入る」タイプ(笑)。
バイクはファッションに近い感覚でした。
自分の育った環境や地域的なものなのか、いずれにせよ、私の周りにはスポーツタイプのバイクに乗っている人は少なく、ツーリングの楽しさやスポーツライディングの爽快さに重きを置くようになったのは、もっとずっと後の話です。
ただ、「格好から入る」のも、今となってはそんなに悪くなかったのでは? とも思っています。
例えどんなに性能に優れたバイクでも、自分がカッコいいと思えるバイクでなければ選ばないですからね。
仮に性能がそんなに優れていなかったとしても「自分はこのバイクが好きなんだ!」っていうことが一番大事。
逆にスペックやマシン性能の素晴らしさから入って、そのバイクのカッコよさに気が付くこともありますから、いずれにしても、バイクとカッコよさは切っても切れない関係なのでしょう。
カタナの意匠を受け継ぎ、現代のKATANAスタイルへ
時代は少し流れ、バイクの流行りはカスタムやトラッカーブームになっていた頃でしょうか。
2000年を迎える頃になると「GSX1100S カタナ」のファイナルエディションが発売され、惜しまれつつも生産が終了します。
その頃になると、自分のバイクの趣味嗜好も変わってきて、クルーザータイプ以外にもスポーツバイクやオフロードマシンなどにも興味が出てきました。
バイクでスポーツする楽しさが少しずつ分かり始めた頃。
「カタナって、いま見てもカッコいいよな」とか「あの時代にこんなデザインのバイクを出したのがスゴイ!」とか、周りの友達と話すようになっていました。
その時はまさか19年後に「KATANA」が復活するとは夢にも思いませんでしたから「GSX1100S カタナ」の栄光を後から知り、すこし憧れのバイクになっていました。
そんな偉大なバイクが復活すると聞いた時は、一体どんなバイクになるんだろう? と凄く高揚したのを覚えています。
そして2019年に満を持して発売された新生「KATANA」は、伝統的な意匠を受け継ぎながらも、時代にあったデザインに生まれ変わりました。
「デザイン」とは不思議なもので、人によって感じ方も違いますし、時代が経つにつれて古く感じられるようになるもの。
バイクのデザインも、その時代や流行を反映させながら、新しい技術や性能などを盛り込み、最先端のカタチに常に進化していかなければなりません。
レジェンドバイク「GSX1100S カタナ」は、ハンス・ムート率いるターゲットデザイン社が40年以上も前にデザインしたバイク。
仮に全く同じようなデザインなら只の復刻版になってしまいます。
新生「KATANA」はカタナ伝統の「日本刀」をイメージソースとしながら、良いところは残し、改良することで、呼び名は同じでも全く新しいバイクに生まれ変わる必要があったのだと感じました。
(下に続きます)
もしかしたら、カタナ世代じゃないからこそ、少し冷静に新生「KATANA」の魅力を感じられるのではないかと思うんです。
次回は新生「KATANA」の性能についてもっと掘り下げてみたいと思います。