2019年に待望の復活を果たした新生「KATANA」は、往年のデザインを継承しつつも『全く新しいカタナ』に生まれ変わっていました。でもそれは、ネオクラシックなスタイルに留まらない次世代のKATANAとして、栄名の殻をさらに打ち破る必要があったからだと思うんです。

文:岩瀬孝昌(編集部)

カタナの名前を受け継いだからこそ、ネオクラシック以上になる必要があった

画像1: カタナの名前を受け継いだからこそ、ネオクラシック以上になる必要があった

過去に隆盛を極めたレジェンドバイクに敬意を込めてオマージュし、最新技術とデザインで現代に蘇らせる。

もしそう言ったバイクをカテゴリー分けするとしたら、これも「ネオクラシック」と呼ばれるジャンルになるのでしょうか。

他メーカーも含め、特にここ数年で様々なモデルが登場しました。

そう言った意味では、新生「KATANA」もこのカテゴリーに含まれるかもしれません。

画像2: カタナの名前を受け継いだからこそ、ネオクラシック以上になる必要があった

しかし、新生「KATANA」は、完全にリニューアルされたデザインやマシン性能も含め、全くと言っていいほど「ネオクラシックでは無い」と感じました。

もっと正確に言うと「ネオクラシックの枠に収まらない」全く新しいKATANAに生まれ変わっています。

まずライディングポジジョンからして、レジェンドカタナとは別物なんです。

意外にもライディングポジションはストリートファイター的?

画像: 意外にもライディングポジションはストリートファイター的?

セパレートハンドル(一部を除く)やバックステップだったレジェンドカタナのマシンディメンションやライディングポジションは、どちらかと言うと「低く長く」というロー&ロングスタイル。

タイヤもフロント19、リア18インチホイールを採用していました。

対する新生「KATANA」はアップハンドルやショートテール、スタンダード的なステップ位置のマシンディメンションで、ライディングポジションは「高く短く」という現代風のスタイルに変化しています。

タイヤもフロント&リア共に17インチホイール。

この時点ですでに異なるキャラクターで造られていることが分かります。

画像1: ライダー身長:172cm

ライダー身長:172cm

ベースモデルとなった「GSX-S1000/F」の扱いやすいマシンディメンションを継承しつつも、ツーリングからスポーツランまでマルチに走りやすいライディングポジションになっています。

アップライトなテーパーハンドルのおかげで、乗車姿勢は常にリラックスした状態を保てます。

視線も高く、ステップもスタンダードな位置にあるので、ネイキッドスポーツに近い感覚。

しかし、シート形状がやや前方に傾いているので、座り心地だけ言えば“スーパースポーツ的”に感じられます。

それでいて、幅広いハンドルは力で抑え込むこともでき、戦闘的な使い方ができる「ストリートファイター」風のライディングポジションになっています。

画像2: ライダー身長:172cm

ライダー身長:172cm

シート高は825mmで、172cmの一般的なライダーが跨ると、両足ならかかとが4〜5cm浮く感じです。

でも、シート形状が前方に向かって絞られており、股や太もも辺りに余裕があるので足は着きやすいんです。

車両重量が215kgと1000ccクラスのマシンでは比較的軽量なので、軽さも加わって跨るのに不安を覚えることはありません。

電子制御をてんこ盛りにしすぎず、ライダーが操れるダイレクト感も残している

画像: 電子制御をてんこ盛りにしすぎず、ライダーが操れるダイレクト感も残している

「KATANA」に搭載されている電子制御システムなどは、本当に必要な技術に絞ってあるように感じました。

現在のスズキの技術があれば、電子制御などをもっと盛り込むことだってできたでしょう。

でも仮に、電子制御をてんこ盛りにして、ライダーが操れるダイレクト感が損なわれてしまってはいけませんからね。

ここからは「KATANA」に備わっている電子制御システムなどを見ていきましょう。

簡単始動の「スズキイージースタート」とライダーをサポートする「トラクションコントロール」

セルボタンを押し続けなくても、ワンプッシュでエンジンが始動するまでセルを回してくれる「スズキイージースタートシステム」を搭載。

エンジンがかかるとECMが始動状況を認識してスターターモーターを止めてくれる、結構スゴイ仕組みなんです。

画像: 簡単始動の「スズキイージースタート」とライダーをサポートする「トラクションコントロール」

エンジンの出力を効率よくリヤタイヤに伝えてくれる「トラクションコントロールシステム」を搭載しています。

介入レベルを、1、2、3の三段+OFFにすることが可能。

低中速トルクが充実しているエンジンと、フロント120/70-17・リア190/50-17の太めのタイヤと合間って、様々なシチュエーションでタイヤの接地感とトラクションが感じられます。

このおかげでパワーモードセレクターが必要ないほどスムーズな走りに貢献してくれます。

縁の下のチカラ持ち「デュアルスロットルバルブ」と「ローRPMアシスト」

画像1: 縁の下のチカラ持ち「デュアルスロットルバルブ」と「ローRPMアシスト」

KATANAに搭載されている水冷4ストロークDOHC4気筒のインジェクションシステムは「SDTV(スズキ・デュアル・スロットル・バルブス)」が搭載されています。

二種類のスロットルバルブがあり、一方のバルブはライダーがコントロールするスロットルグリップの操作に連動し、もう一方のバルブはエンジン側の電子制御で開閉されます。

それぞれのバルブが独立して動くことで、ライダーのレスポンス要求に応えながらも、スムーズで安定した走りと、クリーンな排ガス&低燃費が両立できるという仕組み。

完全な電子制御ではなく、ダイレクト感も楽しめるエンジンになっています。

画像2: 縁の下のチカラ持ち「デュアルスロットルバルブ」と「ローRPMアシスト」

もうひとつ重要なのは、私(岩瀬)が個人的に全てのバイクに搭載されたらいいなぁ!と思っている「ローRPMアシスト」。

この仕組みは、発進時や低回転走行時に、エンジンの回転数やその時のギヤポジション、スロットル開度やクラッチスイッチなどの情報をECUが監視していて、エンジン回転の落ち込みを緩和してくれるシステムなんです。

このシステムのおかげで、発進が快適になり、渋滞時の低速走行やUターンなどの安心感も高まります。極端に言えば、エンストしなそうなくらいスムーズ。

しかも新生KATANAが低速時のスロットル操作がせわしなくならないから、1000ccもある排気量でも超扱いやすいんです。

画像3: 縁の下のチカラ持ち「デュアルスロットルバルブ」と「ローRPMアシスト」

確かに最新の電子制御技術は素晴らしいシステムです。

でも仮に、現代の高性能なバイクで電子制御がひとつも付いていなかったとしたら、私のような一般ライダーがとても扱えないバイクになってしまうでしょう。

新生「KATANA」は、必要な電子制御システムはしっかり搭載し、ライダーがダイレクトに楽しめるような、いわゆる“アナログ感”もちゃんとある、バランスに優れたバイクに感じました。

次回はいよいよツーリングでの走行性能を検証してみます!

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