750cc4気筒エンジンを搭載した『GS750』が生まれたのが1976年。そこから2022年の今日まで『スズキの伝統』として生き残ってきたナナハン4発が『GSX-S750』の現行モデルをもって、その歴史に幕を下ろすことになりました……

排気量750cc。ナナハン4気筒には大型バイクの『ロマン』がある

いきなり身もフタもないことを言いますが、私(北岡)は本来、750ccという排気量にそれほど特別感を持っていない世代です。

大型二輪免許を手に入れた時は既に1000cc以上の排気量が大型バイクの中心でしたし、学生だった当時の私はレースにもさほど興味が無く、大変失礼ながら『なんで750cc? リッターのほうが偉そうでしょ!』くらいのことを思っていました。

その後にバイクに関わることを職業として選び、いくつか750cc4気筒のバイクにも乗りました。

けれど当時は1000ccスーパースポーツが華やかな時代だったこともあり、いわゆる『ナナハン』のバイクというのは『リッタークラスより運転が怖くないバイク』という印象。その頃はまだライダーとして未熟すぎて、その価値がわからなかったんです。

だけど今、私は『GSX-S750』の生産終了に大きなショックを受けています。だって、私の中で『ナナハン』を特別なモノにしたのは、他でもないこのバイクだから。

※写真は2017年モデルです

はじめてGSX-S750に乗ったのは2017年4月下旬のこと。寒い日も少なくなり、ワインディングの路面温度も安定してきた頃合いでした。

試乗記を書くためにスズキさんからバイクを借りて、走り始めた第一印象は『乗りやすくていいね』というレベル。高速道路に乗ってからも特に印象に変化は無し。

※写真は2017年モデルです

このタイミングだから言っちゃいますけど、のんびり走らせるぶんには『わりと普通だな』なんて思ってたんですよ。

だけど、その後にワインディングを走って……価値観が、まるごと引っくり返った。

『このバイクの完成度だけはちょっと異常だ』

私は当時のレビューの中でそう書いています。

それまで『速いバイク』といえばリッタースポーツだと信じてた私がGSX-S750に乗って、最も強く思ったことって何だと思います?

子供じみた感覚で申し訳ないんですが『オレ、このバイクならリッターバイクやっつけられるかも』って、本気で思ったんですよ(笑)

上の関連記事で私はGSX-S750をリッターキラーだと書いていますが、これには裏があります。バイクだけじゃない、自分も(ライダーとして)リッターキラーになれる。そういう思惑が潜んでるんです。

GSX-S750に乗れば『上手いライダー』になれる気がした

バケモノ級、あるいは異星人レベルで『速いライダー』がひしめくバイクの業界。

レース経験者でもない普通のツーリングライダー上がりの私は、クローズドコースの試乗会などで、それら速い人たちにブチ抜かれるなんて日常茶飯事。なんならパワーも排気量も下のバイクにあっさりやられたこともたくさんあります。

そういうライダーを見てて『いいなぁ、ああいう風に走れたらカッコいいなぁ』って、いつも思ってた。うらやましかった。

でもGSX-S750に乗ったら『コイツとなら、自分も速い人たちみたいに走れるかも!』って思ったんですね。

それは『バイクに乗せられてる』って状態かもしれませんけど、それでも特別な人になれるような気がした。それ以来です、私の中でスズキのナナハン4気筒、GSX-S750が特別なものになったのは。

目からウロコ、本気のベタ惚れ。ぶっちゃけ、そのちょっと前に2016年モデルの『隼』様を買っていなかったら、GSX-S750に行ってたんじゃないかナァ……

2022年の今、GSX-S750をフラットな目線で見れば、際立ったものは特にありません。

パワーだってMAX112馬力で特別に目立つ数字でも無いし、車両重量は鉄フレームの重さもあって212kgと、数値だけで見れば『ちょっと重め?』と感じるレベル。

わかりやすい電子制御はABSとトラクションコントロールくらいで、パワーモードのセレクターとかもありません。

(下に続きます)

でも、そういうのじゃないんですよ。

GSX-S750っていうバイクはスペックの数字とか装備じゃない。そこからは何も伝わらない。

だけど私にとってのGSX-S750は、先に言った通り『自分を特別な存在にしてくれるバイク』です。

なぜ、そう思うのか?

生産終了を控えて、最後にもう一度このバイクに乗って『伝えておきたいこと』を、ここからありったけ綴っておこうと思います。

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