今どきナナハン、それに四気筒エンジンじゃなくてもいいはずなのに……
※本記事の車両は2017年モデルです
排気量750cc。通称“ナナハン”というのは、1970年代にメーカー自主規制として設定されたオートバイの最大排気量のこと。
昔は大型バイクに乗るための限定解除試験の突破が異常に難しかったこともあり『ナナハン=憧れそのもの』っていう時代でした。
その排気量自主規制も1990年代には無くなり、当時、熱かったレースのレギュレーションも変わって、大型二輪免許が教習所で取得できるようなりました。
だから今、メーカーが750ccの排気量、そしてレースイメージの直列4気筒エンジンにこだわる理由はもうありません。
でも、スズキだけは750cc/4気筒エンジンのスポーツバイクを残している。
いわゆる“ナナハン四発”を、今日まで捨てることなく、こだわり続けているんです。
それがスーパースポーツGSX-R750の四気筒エンジンを心臓部に持つ、GSX-S750です。
前身としてGSR750もありましたし「スーパースポーツの動力性能を持つネイキッド」なんていうのは、今どき珍しい謳い文句じゃありません。
それでも言わずにいられません。
このバイク、GSX-S750の完成度だけはちょっと異常です。
もはや神がかっているとしか思えないほどに……
驚くなんていうレベルじゃない、唖然とするGSX-S750
走りはじめての第一印象はエンジンの洗練でした。
ずっとナナハン四発を造ってきたスズキだからこそできた熟成、なんて説明では追いつきません。全然足りない。
あまりにもスムーズな吹け上がりがスゴすぎて言葉にしにくいんです。
強いて言うならば、変な表現で心苦しいのですが……
吹け上がりが、美しい
と感じます。
エンジンは鉄の塊のはずなのに、機械的な摩擦抵抗、一般的にフリクションロスと呼ばれるネガティブを1ミリも感じません。
シルキーとか羽のように軽い、なんていう表現以上です。
空気のような透明感をもった加速。
こんなフィーリング、他のバイクじゃ一度も感じたことがありません……なんだコレ!?
「滑るように加速する」って、きっとこういうことなんでしょう。
スロットルを大きく開ければ元気ですが、わざとらしい荒っぽさの演出はカケラも無く、ひたすら純粋に、どこまでも精密感。
最高出力112馬力をまったく怖いと感じさせません。
ナナハン四発ってこんなにスゴいのか!?
最初はそんな感じでエンジンに感激していたんですが、実はGSX-S750の本領は、もうひとつ奥に隠されていたんです。
後編▶▶▶『ある瞬間』からスイッチが切り替わる