スズキの原付スクーター「レッツ」でショートツーリングをしてみて、50ccの原付ならではの魅力をレポート! 今回はいつものスズキのバイク! とはちょっと違ったテイストでお届けします。

スズキの50ccスクーター『レッツ』で往く三浦半島一人旅

休日。

特に予定もないので近場へ走りに出ようと思ったけど、生憎所持しているバイクは2台とも調子がイマイチ。

さてどうしたものかと思ったときに目についたのは、通勤インプレ用に借りていたレッツだった。

SUZUKI Let's

総排気量:49cc
エンジン形式:空冷4ストSOHC2バルブ単気筒
シート高:695mm
車両重量:70kg

税込価格:17万1600円

私(石神)のはじめてバイクとして2年ほど乗っていたのはスズキ「RG50」。最近では50ccに乗ることも少なくなったけど、久しぶりにのんびり走るのも悪くなさそう。

ライディングジャケットを着こみ、レッツのセンタースタンドを上げた。

◇   ◇   ◇

向かうは横須賀・三浦半島方面。

自宅の鎌倉周辺でのんびり走れるような場所は三浦方面しかないし、今回、いちばん最初にレッツに乗って会社まで片道約50kmの距離を通勤してみたら、流石にちょっと無理があることがわかったので遠出は無し。

気軽な気分で海を目指し、観光客で渋滞し始めた鎌倉街道を避けて、地元民ならではの裏道を進んでいく。

土地柄、細い路地が多い鎌倉周辺でも、レッツはその軽さと機動力を武器にスイスイと進んでいく。狭い道では時速30キロでも速く感じるような場所が多く、周りの車も似たような速度で走っているので流れを心配する必要もない。

小坪のトンネルを抜けて逗子に入り、そのまま葉山へ。

途中、流れの速い道で車にせっつかれる場面もあったけど、そういう時は慌てずに追い越してくれるのを待つ。

1時間ほど走ってようやく海沿いへ出た。ただ、付近は50ccスクーターですら停まれる場所が少ないのでそのままさらに20分ほど走って、荒崎のお気に入りスポットでようやく一息つく。

なんだかんだ1時間半くらい走り続けてきたけど、レッツは身長173cmの私が乗っても乗車姿勢に無理が無いのと、シートが肉厚で特に疲労はない。

だけどこの辺りはまだ車の流れが速いところも多く、のんびりは走れない……。

良い機会。ちょっと新しい道を開拓してみることにした。

50ccならではの機動力を生かして、普段は使わない道へ入っていく。この時、地図は見ないで、自身の勘と海の方向で道を選ぶ。

これがなんだか、楽しかった!

そういえば、バイク初心者だった頃も、こうやってよく脇道探検してたなぁ、なんて懐かしみながらずんずん細い路地を進んでいく。……と、妙におどろおどろしい道に出くわした。

ここ通っていいのか……? なんか変な世界に繋がってたりとかしないよね⁉

普通に通れた。

そしたらもっと細い道出てきた。

でも、レッツならいける! そしてこの先に何かがありそうな予感がする!

……畑だ。

まぁ、なんとなく予想はしていたけども。

バイクに乗るまでは、横須賀って街とちょっとの山がある程度だと思ってたたけど、実はめちゃくちゃ畑が多い。

そういえば、私にそれを教えてくれたのって50ccのバイクだったんだよなぁ。

◇   ◇   ◇

そこからは畑の中をひたすら走り、一度大通りへ戻ってから、また気になる脇道があったらダイブ。海、街、畑、を繰り返しながら気ままに半島を南下していく。

中には細い路地を抜けなければ出会えないような道もあって、これは確実にレッツだったから出会えた景色だと思った。

見晴らしのいい直線なんかは、のんびり走れるレッツのおかげでちょっとした旅をしている感じ。変な話だけど、少しお得に思えた。

そして、田舎にありがちな荒れた道に出くわしても70kgの軽い車体と足つきの良いレッツなら不安は一切ない。

むしろ、気になるのは土埃で車体が汚れることくらいか。

そんな感じで海と畑をのんびり堪能しているうちに、いつの間にか三崎港にたどり着いていた。

せっかくだし、なにか海鮮でも食べて帰ろうか、なんて思い財布を開いてみたところ……あまりの惨状に悲しくなり、大きさだけ一丁前な二つ折りのソレをそっと閉じて、足早に城ヶ島方面へ向かった。

ただ、島には渡らない。

何故かって、島にある美味しそうなものがたくさん目についてしまうから。それは24歳の私の胃袋には酷な話で……

仕方なく近くの公園の自動販売機で缶コーヒーを買って空腹を誤魔化していると、同じく休憩していた往年のレーサーレプリカに乗った大学生から、近くにいい道があるという情報を教えてもらった。

それは畑の中を通るクネクネの道で、この道ができた当時は走り屋がたくさんいたそうな。けっこうこの辺り、走っていたつもりだったけど知らなかったな……。

今では舗装がボロボロらしいけど、興味があったのでとりあえず行ってみることにする。

たどり着いた目的の道は、確かに舗装がかなり傷んでいて、ボコボコになっていた。でも時速30キロで走る原付からしてみれば、ちょっと荒れてるな、程度のもの。

逆に、レッツのサスペンションがちゃんと機能しているのを実感できたという点ではよかったと思う。

それにしても、バイクで走るワインディングって時速30キロでもやっぱり楽しい。

50ccでは長く感じる道のり、カーブの連続を満喫しながら、この道を教えてくれた名も知らぬ大学生に感謝した。

◇   ◇   ◇

それから再び三浦海岸沿いを久里浜方面へひた走る。夏真っ盛りの休日の浜辺はたくさんの人で賑わってるけど、ここまでくれば車はあまり多くない。

しばらくしてたどり着いた久里浜海岸もそこそこの人で賑わっていた。

ここは私の母校がすぐそばにあり、なんだか懐かしい気持ちになる。

そういえば当時、自転車でここまで来たことがあったっけ。あれ何時間かかったかなぁ……。親父と喧嘩して家を飛び出した夜のことを思い出してみるけど、寒くて辛かった記憶しかない。

それに比べて、原付は圧倒的に楽だった。自転車には厳密な速度制限はないけど、当時軽音部のバンドマンだった私の体力じゃあ時速30キロをコンスタントに出し続けるなんて到底無理だったし。

そう考えると、やっぱ原付って偉大だなぁ。そばに佇むレッツが急に頼もしく見えてきた。

でも、高校生だって免許さえ取得すれば原付乗れたんだよね。

思い返してみてちょっと損した気分になったけど、当時の自分はまさか自分がバイク乗りになるなんてこれっぽっちも思ってなかっただろうな。

……浜で遊んでいる母校の後輩たちよ。「いかにもバイク乗りみたいな格好して、なんで原チャリ乗ってんだこのおっさん?」みたいな顔でこっちを見るんじゃない。一応まだ24歳だ。

レッツだって立派なバイクなんだ。プロテクター入りのジャケットを着てライディングブーツ履いてたって、何にもおかしいことなんてないんだからな!

……ないよね?

そんなこんなで感傷に浸りながらぼーっと海を眺めていたら、いつの間にか日が傾いてきたのに気づき、慌てて久里浜を後にした。

その後は馬堀まで再び海岸線を進み、横須賀方面は車の流れが速いので避けつつ、内陸の畑と街を抜けて鎌倉へと戻った。

◇   ◇   ◇

昼前に出たはずなのに、家に着くころには辺りは暗くなっていて、たいぶ長い距離を走ったような感覚だ。

普段なら2、3時間で帰ってこれてしまう味気ないルートも、50ccスクーターだとなんだか大冒険してきたような気分。

そして、レッツのセンタースタンドを立てて思うのは「やっぱり原付は偉大だなぁ」ってこと。

RG50に乗りはじめてから、そのバイクに荷物をいっぱいに積んでキャンプ旅もはじめたけど、同じことがこのレッツにだってできると思う。45年前のバイクにできたことが、最新のレッツにできないわけがない。

レッツは、原付免許さえあれば立派に旅を楽しませてくれる。

思い出したけど、私が「初めて乗ったバイク」は原付スクーターだった。

大学1年の春。発行されたばかりの真新しい免許証を握りしめ、そわそわしながら家に帰って親のスクーターを借りて走り回った。

あれはまさに「バイクに乗って感動した」瞬間だったかもしれない。

大きなバイクに乗り始めてからは忘れていたけれど、レッツと1日過ごすことで、バイクに乗ることの本来の感動を思い出すことできたように感じる。

今は原付二種/125ccクラスの人気が上がっているけど、原付一種/50ccスクーターは今でも多くの「バイク乗りの第一歩」だと私は思う。

(下に続きます)

50ccとかスクーターとかなんて関係ない。

通勤や通学だけじゃなく、ちょっとした一人旅も満喫できるレッツ。このバイクはおそらく『バイクで走ることの楽しさを知る』、その第一歩としてふさわしい相棒になってくれると、そう思う。

よろしければ最初の『通勤編』からお読みください!

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