もし人生初の大型バイクが『SV650』だったなら……
バイクは好きで乗るものですし、『運転が上手くなりたいから』っていう理由で愛車を選ぶ人はあまりいないと思います。
なんだかんだ言ってもバイクは見た目が命！ 自分にとって、それが『カッコいいバイク』であるかどうかが重要です。
そこにおいて『SV650』を愛車に選んだ人は、正直、すこし羨ましい……
先の【中編】で言った通り、SV650の最高出力72馬力は峠道において侮れないパワーです。
バイクの運転がすっごく上手な人は『ちょうどいい』と言うかもしれませんが……少なくとも私にとってはちょうどいいなんて口が裂けても言えません。到底無理（笑）
このバイクをコーナーで深く寝かせて、そこからアクセルを開けていく時には【中編】の最後あたりで言ったような戦いが始まります。
ちなみに、そもそもの話なんですが、SV650は『ライダーがきちんと操ってやる』ことをしないと、秘めた実力のすべてを見せてくれないバイクだと私は思っています。普通にゆったり走るぶんには峠道でも何の問題も無いんですが、さらに奥へ踏み込もうとするとスポーツバイクとして正しい操作を要求してくる。
元々、けっこう直進安定性が強めだし、純正装着のタイヤはオールラウンド系でクイックに動くキャラじゃないので、そこも頭に入れつつ。
SV650はコーナーでバイクが勝手に曲がってくれる、のではなく『ライダーが曲げてやる』タイプです。
それが何とも楽しくて、だけどけっこう難しい！
まず最初の難しさとして出てくるのは『速度に応じてちゃんとバイクを寝かせられるか？』でしょうか。
新型『隼』様もそうですが、今どきの最新＆超高性能バイクは知らないうちにバイクが深く寝ていて、勝手に曲がってくれるような感覚があります。それも悪いことじゃないんですが、やはりバイクに乗せられている感は否めない。
でもSV650はコーナーの進入前に、減速からバイクの姿勢を安定させて、ライダーはがっちり下半身で車体をホールドして……といった基本をおろそかにすると、深く寝かせていくのになんだか不安を感じるんです。
だけど、そういった基本をきっちり守れると、嘘みたいにスパッと車体がバンクする。私の場合、5回に1回くらいそれがイメージ通りにできて『お、今のはうまくいった！』って嬉しくなります。
そして、バイクをきちんと寝かせられたら、今度はアクセル全閉から1ミリ、アクセルを開けるタイミングを伺います。ちなみに2022モデルは出力特性の変化によって、この『1ミリ開ける瞬間』が2021モデル以前よりもイージーなのが美点。加速体勢に移行しやすい。
後輪に駆動力が伝わって、リアタイヤが路面を捉える。それを感じたらコーナーの出口を見据えてアクセルを大きく開けていく！
って、そこがまたけっこう難しい（笑）
だってバイクが深く寝た状態からMAX72馬力のパワーを路面に伝えていこうとする訳ですよ？ それは決して暴力的ではないですけど、400ccクラスとは比較にならない力強さでSV650は加速します。この時、きちんとバイクをホールドできていないと前後タイヤの接地感を読み間違えるし!?
といった具合に……SV650でワインディングを走ると、盛大に『自分との戦い』が始まるんです。ひとりよがりの運転じゃ上手く走れない。なんなら自分の愛車の2代目『隼』様に乗ってる時より必死だと思う。
だけどねぇ、それがすんごい楽しいの（笑）
だって逆に言えば、自分が正しく操れば、バイクはそれに応えてくれるっていうことだから。言うなら『一体感』とか『二人三脚してる感』といった感じ。失敗も成功も分かち合える。
そして走り終わった後に、良い意味でクタクタになれるのがいい（笑）
速すぎるバイクでメンタルを削られたような疲れじゃなく、全身を使ってスポーツした後の心地よい疲労感というか……『バイクってやっぱり面白いわっ！』って幸せになれます。
そういう意味で言えば、SV650は最高のパートナーなんじゃないかと。
（下に続きます）
だからSV650でワインディングをがんばって走ると、いつも思います。
大型バイク初心者だった頃に、人生初の大型バイクとしてSV650を選んでいたら……たぶん私、今よりバイクの運転が上手い人になってた気がする。だって大型バイクのカテゴリでこういう『スポーツバイクの教科書』みたいに学べる存在は珍しいもん。
単純に走らせても楽しい上に、大事なことも教えてくれる。このあたり、SV650はとことんスズキ車してます。
きっちり、真面目に、スポーツバイク！
スズキファンの人にも、そうでない人にも、一度は乗ってみて欲しい1台です！