今回の試乗で最も恐れていた、あるいは気乗りしなかったオフロードの時間がやってきました。そして私は、生まれ変わったような気持ちになりました。

重くて大きいバイクでのオフロード走行は苦手です……

細い21インチのフロントタイヤでも、素晴らしい車体にフォローされて、ワインディングを思いっきり走れたことに気を良くしていましたが、問題はここから。

重量230kg。シート高855mm。最高出力82馬力のバイクでオフロードに挑みます……が、気持ち的には萎えてました。やっぱり気持ち的な怖さが残る。9割以上、強がりでダートに踏み込みます。

だってまぁ、スズキさんから虎の子の新型であるVストローム800DEを借りておいて『苦手なんでオフロードは走りませんでしたぁ~』では済まされないでしょうよ。

そう。男には逃げてはいけない時があるのです。

まずは様子見。オフロードへと恐る恐る車体を乗り入れていきます。

私(北岡)はVストローム1050XTでダートを走った経験もありますし、荒れた道をまったく走れないとは思っていません。

普通にのんびりペースだったらいいんですよ。歩くようなゆったりスピードで、フラットなダートを『乗り越えていく』程度なら大きなバイクでも何とかできると思ってます。

ただ、Vストローム800DEは何となく『思う存分ダートでやっちゃってくださいネ☆』みたいな雰囲気が出てるじゃないですか。

そりゃあ私(北岡)だって土煙を巻き上げながら爆走! みたいな走りには憧れますよ? でもそんな運転技術は持ってません。あーあ、これが250ccとかなら良かったのに。こういうバイクで前にオフロードを走ったのはいつだっけかなぁ?

なんて、ヘルメットの中でひとりボヤきながら走り出して……

あまりにも平和……。

緊張してたのはたぶん最初の5分以内。なんかダートを走ってる気がしない。あれ、ちょっと待てよ。このバイクのタイヤは……

知っていたことだけど、ほとんどオンロード寄りな感じのブロックパターンです。

こういうタイヤはバイクを寝かせると、すぐにズルッといくので怖いはずなんですが……えーっと、滑る気がしない? グリップしてる気がする。

けれどこのタイヤ&ダート路面でバイクを寝かせて走るなんていうのは、私のライダー本能が全力で拒否するのでやっていません。

でも脳内から『ちょっとくらいならバイクを寝かせても大丈夫なんじゃない?』っていう囁きが聞こえてくる。デカくて重いバイクに乗ってる気がしない……なんだこれ?

250ccのような気分

これは私の個人的な感覚として留めておいて欲しいんですが、なんなら250ccのトレール車に乗っているような気分になってくるんです。いつの間にか腕からも力が抜けてる。

ヤバいなこれ、軽い林道ツーリングとかならノーマルタイヤでも余裕かもしれない。ここ数年で乗ったアドベンチャーバイクで、そんなことを思ったのは初めてです。だいたいは『これにブロックタイヤを履かせられたら良いのになぁ』って思うのが常なので。

でもこれなら……いけるかも。オフロードのスタビリティとでも言えばいいのか……不安定な路面なのに、不思議と安定感を感じるんです。怖くないし、これくらい普通に走れるなら、ひょっとして『アレ』もイケるんじゃないか?

ていうか、Vストローム800DEすげぇな……どうなってんだコレ?

無謀か? Gモード実験スタート!

一抹の不安は消えないものの、普通に走るだけならば、これまでにないほどダートでも安心できるとわかったので……試してみよう、と思います。

必殺『G』モード!

不安が消えた訳ではありませんが『やってみよう。後はなるようになれ!』という気分になったこと自体がもはや奇跡。当初の予定では『さすがにGモードはよくわかりませんでした……』となる予定だったんです、本気で。

そのG(グラベル)モードにセットすれば『後輪をほどよくスライドさせたままで、バイクが前に進んでいく』と2022Vストロームミーディングで取材したチーフエンジニアの人からは聞いています。

だけどまず、とにかくリアタイヤをブレイクさせてスライド状態に持ちこまなければ話になりません。

なので度胸一発!

オフロードで800ccのバイクで1速フルスロットル! という未だかつてないチャレンジをしてみることに。

いっけぇぇぇっ!? 俺のVストローム800DE!(←借り物)