SV650に『バイクの原点』を感じるような?
パッと乗れば扱いやすい。だけど本気で走らせようと思うと予想以上のポテンシャルに驚くことになる。
最近の(最新の)スズキ製バイクは特にそういった傾向が顕著ですが、実のところ『SV650』にも同じことが言えます。でもSV650は1999年生まれだし、最新モデルとはちょっとニュアンスが違うところもあったり……
特にエンジンですが、例えば新型『GSX-8R』などの新設計775cc直列2気筒エンジンが発生する最高出力80馬力。あれは狙ったトルク特性のためにピークパワーをあえて抑えた結果としての80馬力です。
なので775ccといえど、体感としては確実に排気量以上のパワー感。徹底して『最新スズキのスポーツバイク哲学』にのっとったエンジン設計がされています。実際きちんと高回転まで回すと、私(北岡)を含む普通の人は腰が引けるレベルの速さだと思うし……
それに対して、SV650の最高出力72馬力は『扱いやすさとピークパワーを同時に求めた結果』としての72馬力だと感じています。
直接的に言うなら、新型GSX-8Rや8Sに感じるほどの“鬼トルク仕様”ではない、ということ。とはいえ排気量650ccとしては、かなりトルキーなのですが……
なので、アクセルはけっこう思い切って開けていけるんです。実際の話、タイヤもきちんとそれに応えてくれる。なんなら車線もないような狭い峠道で1速ローギアを使って高回転域までグイグイ引っ張っても、わりと大丈夫だったり……
ただし、それなりの緊張感はあります。というのは、ここのところ最新バイクにばかり乗っていたせいか『リアタイヤがブレイクしてもトラクションコントロールが助けてくれるし……』といった甘い考えがSV650には通用しないから(笑)
実際はトラクションコントロールのお世話になる機会なんて滅多にないんですけどね……でも精神的な安心感が圧倒的に違います!
全身のセンサーをフル稼働させて前後のタイヤを探すような感覚。これは「バイクでスポーティな走りを楽しむ」ことの原点のひとつと言えますが、それも含めてSV650の楽しさだと感じました。
だけど車体のコントロール、バイクの姿勢管理は繊細に!
SV650はフロントフォークはしなやかに動き、リアショックはダイレクト感重視で硬めなのですが、連続するコーナーでバイクを無理やりに振り回し続けると、たまに前後サスの動きがちぐはぐになるような感覚に出くわします。
たぶんセパレートハンドル『SV650X』に標準装備されているフロントのプリロードアジャスターを流用するなどしてセッティングを煮詰めれば解決すると思いますが、今回乗っているのは多くの人々に間口を広げたネイキッドなので。
でも、それだってライダー側が運転にきちんとメリハリをつけてやれば十分に対応可能。操作を中途半端にせず、ブレーキ! 寝かせる! アクセルオン!をきっちり分けてあげるだけでSV650は気持ちよく走ってくれます。
アクセルは大胆に、コントロールは繊細に。
SV650ってきっと『乗り手が操るバイク』なんでしょうね。
ちなみにSV650っていうバイクは、基本的な車体設計としては直進安定性が強めで安定感が前面に出るキャラクターだと感じています。だから運転しやすいし、安心感がある。
でも、それを強く曲げてやれるかどうかはライダーの腕次第。ブレーキでフロントに負荷をかけて、スチール製トラスフレームのしなりが戻る時の「反動」も使ってやるようなイメージで。弾かれるように、跳ねるように、リズミカルに!
そういう走りかたは私自身、10回に1回くらいしか『今のコーナーは上手くいった!』と感じられないのですが、ビシッと決まるとSV650は侮れないコーナリングを披露してくれます。
言葉にするならば、乗り手が全身を使って『曲げてやる』といった感じ!
最新バイクは自動で曲がっていってくれるようなフィーリングを覚えますが、SV650はあくまで人が主体のバイクなんだと思うんです。
そして、自分で言っていて思ったんですけど……
(下に続きます)
これって、SV650の走りには『バイクを操る楽しみの原点』がギッシリ詰まっているってことになるんじゃないでしょうか?
ブレーキも車体姿勢の管理も、コーナー脱出時のタイヤとの相談も……
ライダーが全神経を集中して、積極的に乗りこなす!
乗れば乗るほどにジワジワくる。好きになる。SV650ってきっと、そういうバイクなんだと思います!