Vストローム800/DEは『650の代わり』じゃない
希代の名車『Vストローム650』で1400kmのツーリングをした直後に『Vストローム800』に乗り換えて実力を検証してみたら……私(北岡)の中ではひとつの結論が出ました。
私としては新型『Vストローム800』と『Vストローム800DE』は650の後継機、あるいは代替機ではない。走り終わってみて、そう考えるに至っています。
それに気づけたのはやはり「650から800に乗り換えて連続ツーリング」というアホなことをやってみたおかげだと思います。
私の中でそう結論した理由は先の【ワインディング編】でのお話と、今年2025年1月に乗った『Vストローム800DE』での経験があったから。それらを総合して『あ、そういうことか!?』と直感したのです。
まず前提としてお話しておきますが『Vストローム800』と『Vストローム800DE』、そして生産終了となる『Vストローム650』はバイクのカテゴリとして言うなら「アドベンチャーバイク」に属します。
このジャンルはスズキに限らず基本的に『万能』です。車体が大きいバイクが多いので都市部での通勤や通学にも向いているなんて言いません。でも週末に趣味としてバイクを楽しむ用途であれば万能と言って差し支えないでしょう。
そこでまず生産終了となる『Vストローム650/XT』ですが……
これこそまさに『アドベンチャーバイクらしさ』がド真ん中で体現されたバイクなんだと思います。なにからなにまでアドベンチャーバイクらしさに溢れている。
そして、その完成度が異様なほどに高い。でもバイクとしての基本の成り立ちは『アドベンチャーバイク』の範疇に収まっていると思います。
で、そこから650を中央値として『得意分野に尖らせた』のがVストローム800や800DEなのでは? と思う次第です。
先に言ったとおりVストローム800のロングツーリング快適性は650と同等レベルだと感じています。それは800DEでも同じこと。
Vストローム650と同等のツーリング快適性は新型800シリーズにも与えられていますが、それはスズキのVストローム・シリーズとしての大前提みたいなものです。
そのうえでオンロードでのスポーツ性に尖らせたVストローム800と、未舗装路の走破力に特化した800DEに『明確に分けて発展させた』のが800シリーズなのではないか? と思います。
ちなみにこういった特化の傾向は、ある意味“スズキらしさ”でもあったります。
キャストホイール仕様のVストローム800は「オンロードでのスポーツ性において」既存の大型アドベンチャーバイクの常識から一歩飛び出そうとしているように思えるし、それと同じように……
フロント21インチ&ワイヤースポークホイール仕様のVストローム800DEは「未舗装路の走破性において」既存の大型アドベンチャーバイクの枠組みを超えようとしている。
そんな気がしてなりません。
この2台に共通で言えるのは『どちらもかなり尖ったアドベンチャーバイク』だということでしょうか……
Vストローム650
それに対しての中央値がVストローム650なんです。
バイクを趣味として愉しむ人が1台で何でもこなせるマルチプレイヤー。その『万能性』は確かな魅力のひとつです。そういう人は市場在庫でなんとか新車が手に入るうちにVストローム650を手に入れるべきだと思います。
本当に長く付き合えるバイクなので、中古より絶対に新車がいい。それは断言します。
でも、そこから……
もう一歩、踏み込みたい人には『800』です。
万能だけじゃ飽き足らない。そういう人のために進化して生まれたのが新型『Vストローム800/DE』シリーズなんだと思う。
例えばですが『Vストローム650』に長く乗ってきた人が、愛車との暮らしのなかでスポーティな走りに目覚めたならキャストホイールの800を。オフロードへ踏み込む冒険行に新たな魅力を見出したなら800DEを……それぞれ『別のバイク』と考えて乗り換える。
新型『Vストローム800/DE』とはそういうものなんだろう、と思うに至りました。
650の延長線ではなくて、650を起点として2方向に分かれて進化した別のバイク。個人的な見解ですが、誤解を恐れずにあえて言うと「800は650の代わりにはならない」と考えます。
だって……
新型800シリーズは基本的に『Vストローム650以上を求める人のバイク』だと感じたので……
(下に続きます)
アドベンチャーバイクというジャンルが定着した今の時代に『ありきたりのアドベンチャーバイクじゃ満足できない人』を唸らせる切っ先の鋭い特化型モデル。
もしあなたが今、一歩踏み込んだ「普通じゃない冒険バイク」を探しているのならば……
Vストローム800シリーズはけっこう『好みのバイク』になるかもしれませんよ!?