新型『DR-Z4S』の400cc単気筒エンジンはフルパワーモードで走ると、ダートの上じゃとても扱える気がしない!? だけど……

電子制御の偉大さを『身をもって』知りました……

ドキドキしながらDR-Z4Sと共にコースイン。走り出してすぐに感じたのはパワーモードセレクターSDMSをフルパワーの「A」にして走ると、私(北岡)の技術では到底扱える気がしないということでした。Aモード、ヤバすぎる。

そこでもうすこしパワー特性がフラットになる「B」モードに変更。ギリギリだけど……なんとか走れる感じ。周回を重ねていくうちに少しづつアクセルも開けていけるようになりました……SDMSに感謝したい。

でも、この時パワーモード以上に私をサポートしてくれていたのは『ABS』でした。

ノーマルのDR-Z4Sが履いているタイヤはブロックタイヤはIRC製のGP410Fで、このタイヤの元となるGP410は「オンロードを重視し、フラットダートも楽しめる」というキャラクター。ぶっちゃけで言いますが今回のようなクローズドコースではちょっと心許ない……

DR-Z4Sはスズキさん的に「デュアルパーパス」という位置づけなので、このエンジンパワーに対して舗装路も十分に楽しめるように……という配慮なのでしょう。だけど今回のシチュエーションに限って言えば……

加えて試乗会のコースはもともと4輪用のダートコースだったこともあり、「土」というより「砂利」な部分が多く、かなり滑りやすい。全力でフロントからの転倒に気を配って走る必要がありました。

オフロードコースという場所柄、どうしてもスピードを出さなければならないシチュエーション。そうなると次に待っているのは当然『ブレーキ』です。

ただでさえ久しぶりのオフロードコース。強いブレーキングなんて恐怖でしかありません。でもここで『ABS』が神でした……

車体を真っすぐ立てた状態であれば(私程度のペースの場合)ちゃんと減速できる! コーナーの前までにきちんと調整できるんです。モトクロス状態でブレーキングする人には無用かもしれませんが、私は正直これがなかったら走れていなかったと思う。

コーナーは特にイン側が「4輪が走ったあとを埋めた」感じでフカフカ&砂利だらけ。必然的にかなり速度を落としてからのアプローチ。あまりバイクを寝かせないようにして……

でもリヤタイヤが滑る! けっこう滑りまくる!?

ちなみにですが、このとき私はトラクションコントロールを使っているんです。スズキがオフロード走行に最適化させたという『新Gモード』なのですが、これがまた思ったよりもリアのスライドを許容する感じなのです。

必死でバイクをコントロール。なんなら途中でトラクションコントロールをもっと介入度の高い「1」に変更したらスライド量が減り、適度にスライドを止めてくれるので安心なくらいでした。

トラクションコントロールまでガチ。新Gモードは言うなれば『攻めのトラコン』という印象です。

だけどこのパワーモード「B」とトラクションコントロール「1」の組み合わせは私にジャストフィットらしく、このあたりでようやく「走ること」に集中できるようになりました。

ちなみに介入度最大のトラクションコントロール「2」は、さすがにオフロードコースだとリアが滑らなさすぎて逆にしっくりこなかったかも?

今回は標準装備のタイヤのこともあり、コーナーで車体をあまり寝かせられないので「リアが滑ることで車体の向きを変える」ことがそれなりに必要でした。私にできる範囲で、の話ですが。

なんとかギリギリで走りつづけての休憩時間。コーナー旋回中&立ち上がりのアクセルオンでフロントが縦に滑ることに悩んでいた私は『業界の上手い人』にアドバイスを乞いました。

そこで出たのが「一度トラクションコントロールを切ってみたら? リアがトラクションコントロールでグリップしすぎてるのかも? でもトラコン切ったらそれまでのフィーリングは全部忘れるようしないといけないかもなぁ……」という話。

危なっかしいけど徐々に余裕ができてきた私は『なるほど! それやってみよう!』となりました……なってしまった。

久々のコース走行でアドレナリンも出ていたのでしょう。DR-Z4Sをもっと上手く走らせたい!という欲もあったと思います。よく考えることもなくトラクションコントロール「OFF」で再びコースイン。

コーナーでリアをもっと流して向きを変えて、そこからアクセルの加減をして立ち上がるようにして。

なるほど。確かに立ち上がりでフロントタイヤが前に滑ることが減った気がする!?

これならいけるかも? いけるかも!

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ズバァッ!?

トラクションコントロールを切って2周くらい。様子見の段階から一歩踏み出して「ちゃんと走らせてみよう」へ気持ちスイッチを切り替えてコーナーに飛び込んで、アクセルを開けた瞬間。

一気に、今までにないレベルで一気にリアタイヤがスライド!?

慌てて対応したけど時すでに遅し。反対側におつりも食らってからの転倒。やってしもうた……

原因はシンプルです。

これまで私がトラクションコントロール「1」や「新Gモード」で感じていた『強烈な加速』は、それでもまだ制御された状態のパワー、制御されたスライド量だったということ。電子制御の楔を抜いた途端に転んでしまった訳です。

まさかフロントじゃなくリアで転ぶとは……。ですが言い訳は無用。情けない話ですが……この転倒があったこともあり、私は実体験として『DR-Z4Sの電子制御』の凄まじさに気付くことができました。

(下に続きます)

この経験が無かったら私はおそらく電子制御にサポートされていることにも気付かず「暴れ馬だけどなんとか乗れる!」とか自分のスキルを棚に上げて言っていたと思います。

転んだことは良くないですが、逆に言えば「この電子制御があれば10年ぶり以上でも何とかオフロードコースを走れる」ということでもあると気づきました。

なんだかスゴいな……DR-Z4Sって!?

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