今となってはなかなか見ることが難しくなった貴重な「スズキの歴代バイク」を紹介する連載企画。 そんなスズキの歴代バイクを振り返りながら、もし「今のバイクに例えるなら…?」と、編集部 岩瀬が独断と偏見で選んでみたいと思います。今回はレトロ感たっぷりのオシャレスクーター「ジェンマ」です。

SUZUKI Gemma(1981年)

「映画俳優の名前がそのままバイクのネーミングになっちゃった⁉︎」

SUZUKI ジェンマ(50cc)<1981年>

手頃な価格と気軽に乗れる大きさのバイクの人気が高まっていった70年代の“ファミリーバイクブーム”は、クラッチ操作が不要なATスクーターのカテゴリーにも影響を与えていきました。

それまでスズキの小排気量モデルは、バンバン50(1972年)や、ランディー(1976年)などのレジャーバイクがありましたが、いずれもギア付きMT車や自動遠心クラッチが備わったモデルでしたので、完全オートマチックの、いわゆる“スクーター”タイプの車両はまだ発売されていませんでした。

日本でも、シフト操作が不要で腰掛けるように座るだけで乗れるスクータータイプの人気が徐々に高まってきた時代に、スズキが最初に発売した50ccクラスの“ATスクーター”が、今回紹介する「ジェンマ(50cc)」です。

最高出力3.5PSの50cc空冷2ストローク単気筒エンジンを搭載し、片持ちタイプのフロントサスペンションや、フルサイズのレッグシールド、自動パワーシフト機構付のオートマチック3段変速を備え、乗りやすさや操作性を一段と向上させたスクーターとして登場しました。

ジェンマ50のカタログにも登場したイタリア人俳優「ジュリアーノ・ジェンマ」氏

ちなみに、“ジェンマ”と言うネーミングは、イタリア製西部劇の映画「夕陽の用心棒」などに出演していたイタリア人俳優の「ジュリアーノ・ジェンマ」氏からそのまま名付けられたというユニークなもので、当時のTVCMや製品カタログにはジェンマ氏が自ら出演すると言う豪華プロモーションでした。

いま見てもオシャレで気品あふれるスタイルと、高級感のある落ち着いたデザインで登場した「ジェンマ」は、老若男女問わず乗れるスクーターとして日本でも人気モデルとなりました。

SUZUKI ジェンマ125(1982年)

たちまち人気モデルの仲間入りとなったジェンマでしたが、翌年の1982年には排気量を125ccまで拡大した「ジェンマ125」が登場します。

ファッショナブルなデザインはそのままに、2ストロークだったエンジンは、125ccの空冷4ストロークSOHC単気筒エンジンになり、最高出力は8ps/7500rpm、最大トルクは0.91kgm/4000rpmまで拡大。

125ccは当時の国産スクーター最大の排気量で、二人乗りも可能なダブルシート仕様もラインアップされるなど、ジェンマシリーズの人気をより高めたモデルになりましたが、1987年モデルを最後にしばらくの間ラインアップから姿を消すことになります。

SUZUKI ジェンマ(250cc)<2008年>

そしてジェンマ125の生産終了から約20年後の2008年、近未来的でモダンなスタイルの次世代スクーターとして復活したのが「ジェンマ(250cc)」です。

「低く流れるフォルムが未来的な印象の都会派スクーター」をコンセプトに開発され、流れるようなスタイリングと一度見たら忘れられないほど唯一無二のデザインとカラーリングで登場。

排気量は250ccまで拡大され、最高出力22PS/7500rpmの水冷単気筒DOHCエンジンを搭載しました。

「2人乗りで走ること」にこだわり、ライダーと同乗者との一体感を大切にしたフラットに近い形状のシートが採用され、またがったままヘルメットの収納ができるフロントラゲッジスペースを備えるなど、これまでになかったスタイルのビッグスクーターに生まれ変わりました。

現行車に例えるならどんな車種?

さて、ここからはあくまでもスズキのバイク編集部 岩瀬の個人的な主観で「現在のバイク」に置き換えてみる妄想企画です。

今回はスズキ現行モデルの125ccスクーターにラインアップされている、レトロスタイルのデザインにリニューアルされた「アドレス125」と比較してみたいと思います。

アドレス125(マットボルドーレッドメタリック)車両価格:27万3900円(10%消費税込み)

スズキ・スクーターの代名詞として、30年以上もファンから愛され続けているアドレスシリーズは、2022年10月にレトロモダンなスタイルに生まれ変わって登場しました。

スクーター然としていたこれまでのスタイルを一新し、ヨーロピアンテイスト溢れるデザインを取り入れ、街乗りや普段使いに便利な機能性も盛り込んだ125ccスクーターは、全体のスタイリングこそ違えど、ジェンマシリーズにも通じる“オシャレ感”があるように感じます。

(下に続きます)

新型アドレス125は、スタイリッシュな「ダークグリニッシュブルーメタリック」とシックなワインレッドの「マットボルドーレッドメタリック」「パールミラージュホワイト」「マットブラックメタリック」がラインアップされ、4色展開になっています。

アドレス125(ダークグリニッシュブルーメタリック)車両価格:27万3900円(10%消費税込み)

デザイン性よりも利便性や快適性などが優先されやすい傾向にあるスクーターですが、機能性を損なうことなく見た目も美しいスタイリングに仕上がっているところも、当時のジェンマシリーズに通じるスズキの美学に感じませんか?

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