スペックからは見えない魅力が『SV650X』の真骨頂
低回転域のフレキシブルさは相変わらず。だけど中回転域のトルク特性を大きく変えることによって『650ccスポーツ』としての走りに磨きをかけてきた2022モデルのSV650X。
厳しい厳しいと言われる新しい排ガス規制に対応するタイミングで、守りに入らず、逆に攻めてくるとは思いもよりませんでした。
スズキのエンジニアさんの発想力、その柔軟さに驚きます。
で、その驚きがあったからこそ思い出したことがあります。
現行モデルの初期型SV650(2016年当時はネイキッドのみで『X』はまだ無かった)がはじめて国内導入された時の新車説明会のことです。
開発者の人が言ってました。『SV650はアクセルを1ミリ開けた時のフィーリングにもこだわったバイクです』って。
私(北岡)はVツインエンジンが好きなのですが、どうも鼓動感とか路面を蹴り飛ばすような加速感を重視しちゃう傾向にあります。
なので【中編】の高速道路では『ちょっと大人しくなった?』なんて感じていましたけど、ワインディングに入ったら、自らの読みの甘さに愕然。
SV650シリーズは2016年に国内導入されてから今日まで一切ブレずに初志貫徹していて、この2022年モデルにおいても、その魅力の核であるコーナリングにさらに磨きを掛けてきたんです。
ちなみに、ですけどSV650シリーズって2019年にブレーキのアップデートを受けているんですよね。
ブレーキキャリパーを片押し2ポットから対向4ポットへと変更。実はこの時も『そんなに変わるの?』なんて思っていたんですが、乗ってみたらコーナリングパフォーマンスが違いすぎて驚いた記憶があります。
結局のところ、このバイクが国内に初導入されてから、2019年の変更も含めてSV650シリーズが大事にしてきたのって『650ccのスポーツバイクであること』なんです。
ミドルクラスだからって『気楽なだけ』のビギナーバイクじゃない。きちんと走れるスポーツバイク。
うっかりそのことを忘れていました。特にSV650Xは走りにこだわった仕様だっていうのに、まことに不覚です。
当たり前ですけど650ccクラスって、パワーじゃ大排気量車には敵いません。
じゃあ650ccバイクの魅力は何か? という話になると、やっぱりそれは『走りの楽しさ』っていうことになる。
でもそういうのって、数字としてスペックに現れないというか、目には見えません。
コンパクトで軽い車体を活かすためにブレーキを2019年に進化させ、2022年の今回は『アクセルを開ける楽しみ』を強化してきた。
スズキらしく地道に、SV650Xは研鑽を続けているんです。
だから今回のこれも、私としては『排ガス規制対応』っていうより『進化』に感じる。
最高出力4.1馬力ダウン。私(北岡)はそこにばっかり意識が向いてたけど、スズキは『SV650Xは、どうあるべきか?』をちゃんと考えていて、しかるべき方向性に進化させてきた。
乗ってみないと、ホントのところはわからない。
バイクって面白いものだなぁ、と言うべきでしょうか。いやでもここは、規制対応なんていうタイミングでも本気で『攻めの進化』を加えてくるスズキが面白いと言うべきでしょう。
ということでみなさん、誤解しないでください。
今回は『X』でネイキッドのSV650は乗ってませんけど、間違いなく言えるのは2022モデルのSV650Xが『遅くなった』ってことだけはありえない!
ていうか、むしろコーナーは速くなってますからね?
最高出力が72馬力になったからって、そもそもが最高速自慢のバイクじゃないSV650Xにとっては、根本的に大きな影響なんて無いってことなんでしょう。
それよりも軽さとコンパクトさ、アクセルの開けやすさが絡み合って生まれる『バイクでコーナーを曲がる楽しさ』を、さらに突き詰めてきたことがスゴい!
(下に続きます)
排ガス規制対応って『何かを捨てて、何かを残す』っていう無理ゲーみたいなものだと感じていたけど、まさかこんなクリア方法があったなんて!?
650ccの大型スポーツバイクとして、目指すものが一切ブレない。譲れないものは譲らない。
そこに感じるのは、スズキならではの職人気質。
650ccの大型スポーツバイクとして、SV650Xはさらに完成度を高めてきました!