「車格が大きくて重たいバイクは下りコーナーが怖くて気持ちよく走れない……」そう思ったことがあるライダーにこそ聞いてほしい「隼」の優しいコーナリング性能についてのお話「後編」です。

大型バイクでも「下りのコーナリングが楽しい!」と思えるのか?

どんな排気量のマシンでもツーリング先のワインディングで、上りも下りも同じように気持ちよく走れればスポーツバイクがもっと楽しめるのに……と思いつつも、やっぱり下りコーナーには未だに苦手意識がある万年中堅ライダーの筆者。

前回の記事で「隼」を関東屈指のワインディングロードに持ち込んで、まずは上りコーナーを中心にコーナリング性能を試してみました。

当サイト『スズキのバイク!』をご覧の皆さまならご承知の通り、隼は1339ccを超えるスズキの最大排気量マシンかつ、ホイールベースも1480mmと長めで車重は264kgと、いわば“横綱級”のビッグバイクです。

さらに最高出力188馬力のエンジンパワー!と聞くと「そんなスゴいの峠で扱えるのかなぁ……」と思ってしまいます。ところが、いざ隼を始動してみるとアイドリングから3000回転くらいまでの低回転域がものすごく扱いやすい出力特性になっていて、思わず拍子抜けするくらいに“優しいエンジン”になっていることに驚くんです。

ボタンひとつでパワーモードが切り替えられる

まず隼には電子制御で出力特性やトラクションコントロールなどが瞬時に変更できる『SDMS-α(スズキドライブモードセレクターアルファ)』が備わっていて、予めプリセットされている「A(アクティブ)」「B(ベーシック)」「C(コンフォート)」の3つのモードに加えて、ユーザーが任意に設定できる「USER」の4種類のモードチェンジができるようになっています。

隼のゆとりあるエンジンパワーは、ライダーのスキルや走るシチュエーションによって最適なライディングモードを選ぶことができますが、例えば一番アクティブな「A」モードでワインディングを走っても、パワーがありすぎてギクシャクするような出力特性にはそもそもなっていないんですね。

もちろん、スロットルをガバッ!と開ければとんでもない速度がでるのですが、ハイパワーマシンにありがちな、ちょっとスロットルを開けるだけでドカンッ!とパワーが出すぎるような、いわゆる“ドンつき感”が全然ないことに安心感を覚えます。

しかし、その見た目以上に扱いやすいエンジンパワーで上りのコーナリングは楽しめても、何かと制御が難しい下りコーナーでその巨躯を楽しく扱えるのでしょうか?

264kgの巨躯を指一本で操れた⁉︎ 下りコーナーのブレーキングがまるで怖くない!

下りコーナーが連続するワインディングに差し掛かり、まずはフロントブレーキの性能を探るためにアクセルを戻してブレーキレバーを握り始めると……

あれっ⁉︎ 下りコーナーが近づいているのにブレーキングが不思議と怖くないぞ⁉︎

しかも、ブレーキングで起こるはずのピッチングモーションがほとんど起きている感じがしなくて、スーーっと落としたい速度まで減速してくれている!

ていうか……

指一本で軽く握っただけなのに⁉︎

隼の264kgある巨体にライダーの体重や下り坂のといった要素も加わっているはずなのに、まるで小排気量のバイクのブレーキングと同じか、それ以上にブレーキ制御がしやすいなんて!

下りのコーナリングで、隼のエンジンパワーよりも安心感を覚えたのが、軽い操作でリニアに反応してくれる抜群のブレーキング性能でした。

それもそのはず、隼は前後連動の「コンバインドブレーキシステム」を採用しています。これは極端な話、ライダーがリアブレーキを一切使わなくとも、フロントとリアブレーキを同時に操作している状態になるんです。

さらに、フロントにブレンボ製のStylemaキャリパーを備えた高性能なφ260mmのダブルディスクブレーキを装備していますし、コーナリング中でもABSと連動して万が一のブレーキロックを防いでくれるモーショントラックブレーキシステムも備わっています。

これだけのブレーキ性能が備わっているなら、もっと速い速度域からでも意のままに巨大な車体を制御できそう! って走りながら感じられるほど……

前回の記事でも解説しましたけど、本来なら下りのコーナリングって侵入速度や車体の重さなどがスピード減速を妨げているようなきらいがあって、スピードの制御が上りコーナーよりも難しいから苦手だったはずなんですけど……

なんていうか、隼のブレーキングはブレーキの効き始めから安心感が違うんです。

「あぁ、これくらいレバーを握ると、ここまでブレーキが効いてくれるのね」って感じで、ブレーキングしながら自分の落としたい速度までの操作加減が手に取るようにわかる。

下りのコーナーでもスピードに怖さを感じることなく、上りコーナーと同じように抑揚のある加速/減速ができるんです。

すべては総合的な安心感⁉︎コーナリング中に視野が広く感じられる「隼」の神ハンドリング

そして、隼が下りコーナーでも走りやすく感じるのはブレーキ性能の高さだけじゃありません。

減速時のバックトルクによるエンジンブレーキを軽減してくれる「アシスト&スリッパークラッチ」も備わっているところが下りコーナーの走りに安定感をもたらしてくれます。

例えば、ブレーキングでエンジン回転域やギア選択が多少合わなかった時でも、強烈なエンジンブレーキを緩和してくれるので、イージーミスでギクシャクするようなことがほとんどありませんでした。

さらに純正タイヤは「隼」専用に開発されたスポーツ性能やウエット性能も高いブリジストンの「BATTLAX HYPERSPORT S22」を履いていることもあり、前後タイヤの接地感がそもそも高く、前後輪が路面に張り付いているかのような安心感があります。

ちなみに隼のフロントタイヤの幅は120mm、扁平率は70%の17インチとやや太めで、リアに至っては総幅:190mm、扁平率:50%の17インチで、かなりのワイドタイヤを履いています。ですがこの前後タイヤが、車体がバンクしていても、路面に食いつくような接地感を生み出している感じなんです。

そして、何と言っても隼にはライディングを陰ながらサポートしてくれている電子制御システムの数々が備わっています。

例えば、トラクションコントロールをさらに進化させた「モーショントラックトラクションコントロールシステム」は、様々なセンサーが車体の動きや姿勢をIMUが感知していて、リアタイヤのトラクションが薄れたりスピンを検出した場合に、即座にエンジン出力を自動調節してくれるありがたいシステムが搭載されています。

トラクションコントロールの介入レベルも10段階+OFFのモードから選択できるので、ライダーの技量やシチュエーションによって細かく設定できます。

さらには、アクセルを全閉にしたときに発生するエンジンブレーキの強さを、燃料噴射とスロットルバルブの開度で調整する「エンジンブレーキコントロールシステム」も備わっているから、低めのギアで走っても不思議になるくらいスムーズです。

他にも前輪のリフトを抑えながら最大限の加速が得られる「アンチリフトコントロールシステム」やシフトチェンジにクラッチレバー操作を必要としない「双方向クイックシフター」など、陰ながらライダーの走りをサポートしてくれる電子制御システムがたくさん備わっています。

これが隼でなければ、きっとこれだけ車格の大きいバイクで「下りコーナーが楽しい!」って思えることはなかったんじゃないかなぁ……。

隼にはライダーがバイクを操る楽しさを損なわない“アナログな部分”と、一般ライダーではとても制御できない部分を電子制御でサポートしてくれる“デジタルな部分”が絶妙に共存していて、走る安心感と楽しさがあります。

なんだか隼に乗ると「下りコーナーがちょっと上手くなったんじゃないか?」って錯覚するほど……。

(下に続きます)

横綱級ボディでも、筆者のような下りのコーナリングが苦手なライダーでも不安なく走れてしまうのは、ブレーキング性能やタイヤの接地感だけじゃなく、電子制御システムや車体の総合力のおかげ。

きっとそれらが隼の『神ハンドリング』を生み出しているんでしょうね!

よろしければ最初の『ディメンション編』からお読みください!

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