「隼」のツアラー性能と燃費性能を探るガソリン20リットルの1タンク旅
普段は250ccのオフロードバイクを愛車に持つ筆者(イワセ)は「車格が大きくて重たいバイクは下りコーナーが怖くて気持ちよく走れない……」という苦手意識がありました。
ところが前回の記事でスズキが誇るアルティメットスポーツ「隼」を関東屈指のワインディグに持ち込んだら、下りコーナーの怖さがウソみたいに消えてなくなったほど、ブレーキング性能やコーナリング性能の高さに安心感を覚えました。
大型バイクでも「下りコーナーが楽しい!」と思えたほどコーナリングへの苦手意識を克服できたのは、やはり隼に備わっている「誰にでも扱いやすい“優しい乗り味”」のおかげだと思います。
しかし、バイクは峠のコーナリングなどをスポーティに走るのも魅力のひとつですが、長距離のバイク旅が好きな筆者は、ツーリングでの「快適性能」や「燃費性能」「使い勝手」なども気になってしまいます。
そこで今回は「隼」に丸一日乗って、アルティメットスポーツの秘めたツーリング性能を中心に、燃費性能や航続距離なども含めた“旅での使い勝手”を確かめてみたくなりました。
スポーツ走行では完璧と思えるほど扱いやすい「隼」は、ガソリン満タン20Lで一体どれだけ走るのか?
サービスエリアで隼のガソリンを満タンにして、燃料1タンク使い切りツーリングに出発します!
1339ccの大排気量を誇るアルティメットスポーツは、ひと度スロットルを回せばとんでもないパワーが出るのに、常用時は3000〜4000回転くらいでも気持ちよく走れるくらい、ゆとりのある出力特性になっています。
ハイスピードでも意外なほどスロットル操作が穏やかなので、手首をグルっと捻る必要がなく、巡航速度をキープしやすいのもツーリングで快適なポイント。
これは高速道路の100km/h走行でも変わらず、6速/3000〜4000回転ほどで巡航できてしまうほど、エンジンパワーに“ゆとり”を感じながら走れます。
この低めとも思える回転域でもスムーズに加速してくれる優しい出力特性があるおかげで、長距離が疲れにくいのはもちろんなのですが、それよりも快適だったのはフルカウルやフロントスクリーンによる「空力特性」でした。
前傾姿勢のスクリーン越しからだとヘルメットの上部や肩付近に少し走行風を受ける程度。開発段階での風洞実験を何度も繰り返してエアロダイナミクスを追求しているのがよく分かります。
さらにボリュームのあるフルカウルのおかげで、ライダーの脚や腰への走行風があまり当たらないから、高速域でもあまりスピード感を感じさせず「あれ?もう100km/hも出てるの!?」と、思わずメーターを2度見してしまうくらいです(笑)
2時間/150kmほど高速道路を移動すると、あっという間に目的地のインターチェンジに到着。
バイクの車種にもよるけど、通常は2時間くらい走ると「流石にそろそろ休憩しようかな」と思うのですが、隼はむしろ「高速道路を降りたくないなぁ……」と思うくらい、ずっと乗っていても疲れません。
隼はスピードの速さも車体の快適さにおいても、全てに余裕がある。
高速道路でのハイスピード域でも、一般道の速度域となんら変わらないほどの快適さでした。
停まるのは信号待ちだけ!常用回転域3000rpmで楽しめる「隼」の優しい一気走り
今回の目的は隼のガソリン満タン20Lで一体どれだけ走るのか?を検証しながらツーリングしていることもあり、高速道路を降りてもあえて停まりません。
丸一日ツーリングに出かけると、例えば、信号待ちや道が渋滞しているところなど、適度に停まったりゆっくり走るシチュエーションも自然と出てきますよね?
それだけで休憩代わりになるくらい、隼に乗って走っていると疲れにくいし、むしろ停まりたくない気持ちでずっと乗っていられる。
車体も大柄だし車両重量も264kgあるけど、一度跨ってしまえばその車格の大きさはあまり感じず、不思議な乗りやすさがあるんです。
隼は乗ってみるまでは、有り余るパワーを抑えながら、ある意味『ウズウズしながら走る』ものだと思い込んでいましたが、一般道の60km/hでも「ゆとりあるパワーを楽しみながら走る」ことができます。
電子制御になったスロットル操作は、どの回転域でも素直に反応してくれるので、ある意味エンジンをたくさん回して走らなくても、出したい速度やパワーが自然に湧き出てきます。
アイドリングから3000回転くらいまでの低回転域がものすごく扱いやすく、高回転型のハイパワーマシンにありがちな低回転域のトルク不足もないから一般道を流すように走っていても気持ちがいい。
ストップ&ゴーが多い街中や渋滞などでも、我慢を強いられることがないので、下道のツーリングでも疲れにくく、普通のバイクとなんら変わらない感覚で、気負う必要がまったくありませんでした。
そして、隼のブレーキング性能は、ツーリング先で出会うワインディングをスポーティに走る楽しさをさらに高めてくれます。
フロントにブレンボ製のStylemaキャリパーを備えた高性能なφ260mmのダブルディスクブレーキを装備していますし、前後連動の「コンバインドブレーキシステム」を採用した隼は、コーナリング時のブレーキングにあまり自信がないライダーでも「意のままに制御できそう! 」と思わせてくれるほど。
さらに、ライディングを陰ながらサポートしてくれている電子制御システムや、コーナリング中でもABSと連動して万が一のブレーキロックを防いでくれるモーショントラックブレーキシステムなども備わっていますから、どんなスピード域からでも思った通りの減速ができるコントロール性と安心感があるんです。
なんだか隼に乗ると「下りコーナーがちょっと上手くなったんじゃないか?」って錯覚するほど、大型バイクにあまり乗り慣れていないライダーでもコーナリングが楽しめるんですよ?
排気量1339ccの直4気筒エンジンなのにお財布に優しい?
サービスエリアでガソリンを満タンにしてから、信号待ちや渋滞など以外は休憩も無しにノンストップで走り続けても身体は全然疲れていません。
距離にして310.2kmほど走り続けたところで、ようやく給油ランプが点滅し始めました。
この時点で満タン給油してみると、入れたガソリンの量は17.38Lでしたので、満タン法で計算すると、今回の燃費は17.865…km/Lという結果になりました。
隼の燃料タンク容量は20Lなので、タンク内にはまだ約2.62Lほどガソリンが残っていた計算になります。もし20L全てのガソリンを使い切ったとしたら、航続距離は単純計算で350km以上か……
超大排気量とも言える1339ccの4気筒エンジンを搭載していることを考えたら、思った以上に良好な燃費と言ってもいい数値だと思います。何より300km以上もガソリン給油を意識せずに走れるのは、ツーリング好きにとって嬉しい限り。
それに、300km以上休憩無しでほとんど疲れずに走り続けられる大型スポーツバイクは、筆者はこれまであまり出会ったことがありません。
(下に続きます)
スズキが誇るアルティメット・スポーツとして「市販車で300㎞/h以上出る!」や「ギネスブックにも載った世界最速のバイク!」など、凄すぎるマシン性能が備わっているのに、一度乗ったら降りたくなくなるほどツーリングでも快適に走れる“優しい性能”も秘めている。
隼が“究極のバイク”として世界中にファンを持つ理由は、この二面性が『ひとつのバイク』に備わっているからなのではないかと思っています。