Vストローム650は『650ccバイク』の常識から逸脱している
Vストローム650/XTを我々『スズキのバイク!』が奇跡のバイクと呼ぶ理由。
このバイクの真価は「街でちょろっと乗っただけ」では到底わからないけれど、高速道路に乗ってみるとその『異質』の片鱗が顔を出しはじめます。
時速80km~90kmで走っている時は「乗り心地の良さ」と「ウインドプロテクション性の高さ」をまずは感じる。
そしてトップギア6速で時速80kmくらいだとエンジン回転数も低めなので、Vツインならではの鼓動感が心地いい。2気筒エンジンのツアラーらしい味わいが良い感じ。
でも、ここまでは言ってしまうと『他のバイク』でも感じられることです。
だけどそこから時速100km、そして高速道路によっては時速120kmといった速度までスピードを上げていくと……
『え? なにこれ?』
って驚くことになるんです。
マフラーからの排気サウンドはもともとがジェントルなので、風の音でほとんど聞こえません。そしてエンジン回転数が5000回転あたりを超えると、それまで感じていた『Vツインの鼓動感』がスゥーッと消えて……
そこから先が『Vストローム650の異世界』です。
速度を上げていくほどに路面に張り付いているかのような安定感が強くなっていく。通常、バイクというのは速度が上がれば不安定になるはずなのに、感覚的にはなぜかその逆。
まるでダウンフォースでも発生しているかのように……恐るべき安定感で矢のように走る!
そしてその状況の中でも、ライダー側は一切がんばる必要がないんです。平和そのもの。
例えて言うなら、新東名高速道路を時速120kmでクルージングしていても感覚的には時速100km以下の気分。緊張感が無い、というと誤解を招きそうですが本当にリラックスしたまま速度を維持できます。だから、精神的に疲れません。
そのリラックス感を支えるのは、先に言った『速度が増すごとに高まる安定感』とパーフェクトなウインドプロテクション性能。
ご存じのかたもいらっしゃると思いますが現行型のVストローム650が2017年に登場した時、上位モデルとなる「Vストローム1000」と見た目がかなり似ていました。
Vストローム1000 ※生産終了モデル
もちろん細部を見れば違いは多岐にわたりますが、上半身に受ける走行風の防御力に関しては1000に匹敵するレベルだったと記憶しています。あの当時からVストローム650はエアロダイナミクスを徹底して追及していたんでしょう。
風と喧嘩をせずに空気の壁を突き抜ける。そういうデザインなんだろうと私は思っています。
ボディサイズもリッターバイク同然の大きさで、ホイールベースも1560mmとかなり長め。抜群の直進安定性にしなやかな前後サスペンションも加わり、高い速度域でも「快適な乗り心地」がキープされたまま。
速度を上げると苦しくなるのがバイクの常識のはずなのに、Vストローム650は速度が上がるほどに活き活きとしてくる!
普通は……逆だろ!?
だけどそれがVストローム650。それがこのバイクを『奇跡のバイク』と言いたくなる理由のひとつです。
完全に排気量を超えた高速クルージングの安定感と快適さ。疲れることなく、どこまでも走り続けられる。
それこそ『1日1000km』という距離に対して「まぁ、普通にいけそうだな」と思えるくらいに……実際は『それ以上もいけるんじゃねぇ?』なんて感じてしまうのですが(笑)
(下に続きます)
でも、Vストローム650はそれだけじゃない。ここまでなら『超快適な傑作ツーリングバイク』であって『奇跡』と言うまでには届きません。
ツーリング性能の高さは、このバイクにとって『魅力の入口』でしかないんです。
その『脅威』は高速道路を降りた先でのワインディング……そこで感じるのは『ありえない』という感覚。峠道のVストローム650は……信じられないほどに戦闘機!?