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スズキのエンジンは低速トルクを重視……のはず
ジクサーSF250とジクサー250に搭載される、スズキ虎の子の新設計『油冷エンジン』の説明を聞いていて、ちょっと気になったことがありました。
それはエンジンのボア×ストローク比がジクサー250シリーズとスーパースポーツGSX-R1000Rで酷似しているということ。
エンジンのシリンダー内部の内径(ボア)と行程(ストローク)っていうのは、そもそものエンジンのキャラクターに大きく影響を与える部分です。
このボア×ストローク比をGSX250R(ボア53.5mm×ストローク55.2mm)やジクサー150(ボア56.0 mm ×ストローク 62.9 mm)のエンジンのようにロングストローク型(ボア<ストローク)に設定すると、エンジン単体の基本的な性格としては低速からの力強さを重視したキャラになります。
でもジクサー250シリーズの油冷エンジンは
ボア76.0mm × ストローク54.9mmというショートストローク型(ボア>ストローク)です。
そして最高出力197馬力を誇るスズキの最強スーパースポーツGSX-R1000Rのボア×ストロークはと言うと……
ボア76.0mm × ストローク55.1mm
ジクサー250のエンジンとボアはまったく同じ、ストロークが0.2mm違うだけ。
0.2mmのストローク差のみ。まぁ、ほぼ同じですね……
エンジニアのかたも言っていましたが『このままだと高回転型になります』とのこと。
ジクサー250の油冷エンジンは吸排気がキモ
そこで新設計の油冷エンジンは、吸気と排気を低速重視にセッティングして調整しているとのこと。
言われてみれば(排気量の差はあるけれど)GSX-R1000Rだって高回転型にも関わらず、素晴らしい低速トルクに溢れています。
調べてみたらV型2気筒エンジンのアドベンチャーツアラーのVストローム650/1000だってエンジンはロードスポーツがベースでショートストローク型でした。
高回転型エンジンを低速重視で味付けするのは、スズキにとって手慣れたものなのかもしれませんね。
ジクサー250は高回転で鋭い走りを見せる?
しかも、徹底的にフリクションロスの低減に注力している新型油冷エンジンは、ピストンの裏側の見えない部分まで肉抜きされていたり、シナジーサークルテクスチャーコーティングという技術で油膜の厚さを最適化しています。
フリクションロスって、1000ccのスーパースポーツだと40~60馬力もの損失があるんですって。
ですから、排気量任せのチカラ技が効かない250ccでは、フリクションロスの低減はさらに効果的。
走らせるのが楽しみになるエンジンです。
新型油冷エンジンはSOCS(スズキ オイル クーリング システム)が自慢です。
シンプルなので低コスト化に貢献しつつも、必要十分な冷却性能を確保できることがメリット。
水冷のほうが単純な冷却性能には優れているようですが、250cc程度の発熱量はSOCSでかなり余裕をもって管理できるようです。
これによって軽量でありつつ、低コスト化も実現できるっていうんだから素晴らしいですよね。
その油冷システムでは冷却のためのオイルの経路となるオイルジャケットに、わざと凸凹をつけています。
このバウンダリーレイヤーブレイカーという突起によって、オイルの流れに意図的に乱流を起こすことで熱伝導率を増加させているとのこと。
これ、スズキの特許だそうです。
ただ水の代わりにオイルを流して冷やしているだけじゃない。オイルのそのものの熱伝導率までコントロールしているのが新しい油冷エンジンなんです。
いやもう……エンジニアさんの考えることって、まじでスゲェ……
ジクサー250の走りは数字だけで判断できない
新しい油冷エンジンは、スペックだけで見れば最高出力26馬力のSOHC単気筒エンジンです。
でも、特許のこともあるし、そのフィーリングなども含め、既存の感覚に当てはめた推測はできません。
すべてはジクサー250とジクサーSF250が、公道を走り始めてからのお話。
新しい油冷エンジンはボクたち日本のライダーにとって、未知の存在なんです。
そこに『スズキらしさ』はあるのか?
今からそれが楽しみすぎです!