ツーリングはだいたい『思い通り』には運ばない
見た目は完全にアドベンチャーバイクだけど、どうやら『一般的なアドベンチャー』の枠組みから、すこしばかり脱線気味なキャストホイール仕様のVストローム1050。
ワインディングで走っている時は、それこそ2気筒のオンロードスポーツに乗っているような感覚で、コーナリングに夢中になれます。これは、このバイクの大きな特徴です。
だけどストローク長めでしっとり動く前後サスペンションと高いウインドプロテクション性能は、まさしくアドベンチャーバイク。高速道路を走っているぶんにはホイールがキャストだとかスポークだとか、そこに違いは感じません。
ストレートに言いますけど『抜群に快適』だとしか言いようがない。
高速道路で距離を稼ぐ、もしくはタンデムで旅をするならVストローム1050およびVストローム1050XTは『スズキ最強』でしょう。おそらくGSX-S1000GT以上に。
快適性も満喫したいので……
先に峠で走りを堪能したので、今度はその快適性を満喫すべく高所にあるスカイライン的な道を目指し、一気に山を駆け上がります。
ちょっとくらい荒れた道でも余裕すぎっ！
狭い道で道路が荒れていてもぜんぜん負担を感じません。なんならローギア1速がめちゃくちゃ使いやすくて、タイトな峠にありがちな『急勾配の超ヘアピンカーブ』すら平和に感じる……。
そして『コイツとならどこだって走って行けるゼ！』くらいの高いテンションでグイグイ標高を上げて、上げて、上げて！
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霧で真っ白になったわ。
上の写真は『かなり霧が薄いところ』で撮ってみたものです。場所によっては10m先すら見えないスーパー濃霧。ここまで濃い霧に巻かれたのは久々でした。
走っているだけでウェアも濡れるし、それ以前に路面も濡れてる。
バイクで走っていて楽しいと感じる瞬間が完全にゼロ。快適ツーリングを楽しむつもりが、残念すぎる状況に陥りました……
まあね、ツーリングにはこういうこと、よくありますよ。知ってる。思い通りにいかないのもバイク旅ってやつです。
でもさぁ、それにしたってさぁ……今じゃなくてもいいのに。
これじゃあVストローム1050の爽快さをお伝えできないじゃないですか。
あまりの濃霧に目的地へ辿り着くことを断念。引き返しました。細い道で、いきなり正面からクルマが出現する恐怖に身の危険を感じたのです。
予定では抜けるようなブルースカイの下をVストローム1050とテンポよく駆け抜けるはずでした。無念。
劣悪な環境で感じたもの
ただ、ですね……
怪我の功名みたいな感じですが、収穫はありました。このバイクだからこそ、です。
乗っているのが純粋なオンロードスポーツだったら、走っている間ずっと『怖えぇ～』って緊張していると思います。
だけどVストローム1050だと、こんな劣悪な環境の中でも余裕が消えない。
濡れた路面で、アスファルトは凸凹で、落ち葉もたっぷり。なんなら、あたり一面に栗が敷き詰められているような道にも出くわしましたが、そんな中で『ほうほう、これでも平気なんだ』とか『おおー、優秀だねぇ』など悪路をクリアするたびにヘルメットの中でひとりごとを言ってました。
楽しくない環境のはずなのに、なんかちょっと楽しかった（笑）
あとね、こういう環境だから気づいた。Vストローム1050って『アクセルがめちゃくちゃ軽い』んです。グリップを回す力がほとんどいらない。
バイクによっては『アクセルを重くする＝グリップを回すのにちょっと力がいる』ようにして、加速に重厚感を演出したりする手法もあるんですが、Vストローム1050はそんなことお構いなし。
『長旅するならアクセル軽いほうがラクでしょ？』というスズキの徹底ぶりを感じます。
そして、排気音が静かなのも良かった。荒れた道やら、真っ白の霧やら。そういう環境で運転に集中できる。
実際、音量が大きすぎるバイクって高速道路なんかでは逆に疲れますし、タイトな峠ではちょっと気が散ることがあるんですが、このバイクにそれはありません。
なんかもう職人ぽい。Vストローム1050は完全なる『ツーリング職人』です。
大きく主張はしないけど、走りを支えてくれる。不安を感じさせず、ライダーを護る。
バイクのツーリングでは、思う通りにはいかないことがたくさんあります。いきなりの豪雨もあれば、今回みたいな霧もある。そういう中で、このバイクは間違いなく、頼れる。
何から何まで『安心＆快適ツーリングするため』に徹底してるんです。このあたり、実にスズキらしいと言うほかありません。劣悪な環境の中でバイクに助けてもらったから、そう感じることができました。
引き返して、峠を下って、霧が晴れて。
通常だったら緊張から解放されて『ふぅ～』と座り込みたくなる状況ですが、恐ろしいほどに『消耗していない自分』がいることに驚き。
なんなら『今回はちょーっと残念だったネェ。でも、また来ればいっか！』くらいのことを思ってました。
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でもこれって、わりと『スゴいこと』です。
だってワインディングでは夢中にさせてくれて、タフな環境では護ってくれるんですよ？ あまりにもナイスガイすぎる。私が女性なら恋に落ちる寸前です。
なので、爽快な走りの感想はまたの機会に。大丈夫、このバイクは2023モデルにもラインアップされるんですから。
キャストホイール仕様の『Vストローム1050』ってどんなバイク？
そう聞かれたら今後、私は『状況によっては、XTをしのぐほどに“男前”なバイクだよ』って、そう答えたいと思います！