隼に一週間乗り続けたら『好き!』が10個も見つかった
隼はスズキが誇る究極のバイクだけに、自分には扱えないレベルの乗り手を選ぶバイクだと思っているライダーは少なくないかもしれません。
現に筆者の私(岩瀬)も「カッコいいけど、乗りこなすのは無理そう……」と感じていました。
でも、実際に乗ってみるとその見た目からは想像できないくらいの扱いやすさにビックリし、隼ほど乗る前と乗ったあとで印象がガラリと変わったバイクははじめてと思えるくらい乗りやすいバイクだったんです。
そこから一週間、隼に乗り続けてさらに分かったことがあります。
今回は“まとめ編”として私が「隼」に一週間乗ってみて感じた“使い勝手”やユーザー想いな“ユーティリティ”に関する率直な感想をご紹介します!
隼の優しさとライダー想いのユーザビリティ10項目
【隼の優しさ①】フルカウルとウインドスクリーンで走行風が快適すぎるところ
隼が一度乗ったら降りたくなくなるほど快適に感じるのは、走行風をほとんど感じさせないほど「空力特性」に優れているところ。
ボリュームのあるフルカウルとフロントスクリーンのおかげで、特に高速道路で前傾姿勢になっている時は、スクリーン越しからだとヘルメットの上部や肩付近に少し走行風を受ける程度。例えば時速100kmで走っていても100km/h思えないくらい快適なんです。
隼の開発陣の方も「風洞実験による空力特性に徹底的にこだわった」と言っているだけあって、フロント周りにぶつかった風はほどんどライダーに当たることなく後方に抜けていくエアフロー・デザインで設計されています。
このおかげで長距離移動が苦にならないほど疲れず快適なんです。
【隼の優しさ②】ETC2.0車載器が標準装備!取り付けの手間が不要で高速走行が快適なところ
高速道路を使ったツーリングによく出かける筆者は、隼に「ETC2.0車載器」が標準で搭載されていることも外せないポイントです。
タンデムシートをメインキーで外すだけでETC車載器にアクセスできますし、ETCを取り付ける前提でシート下スペースが設計されていますから、見た目もスッキリでまさに完璧な仕上がりになっています。
標準でETC非搭載のバイクは車両を購入してから、あるいは購入のタイミングでETCセットアップ登録店で取り付けてもらう必要がありますが、当然ながら別途費用も手間もかかりますし、車両によっては取り付ける場所にちょっと困る場合もあります。だからこうして標準装備なのは本当にありがたい。
ちなみにバイクの市販車でETC車載器が標準で装備されたのは、2014年モデルの隼が最初なんです。こういったところもスズキのユーザー想いの部分だと思います。
【隼の優しさ③】実はヘルメットホルダーが2つ付いているところ
隼の便利ポイントとして、意外に見逃しやすいのが、タンデムシート裏に「ヘルメットホルダー」が備わっているところ。
写真のようにヘルメットのDリングをフックに引っ掛けてタンデムシートを閉じるだけで、ヘルメットを施錠させることができるんです。
しかも左右に2つ付けられるので、タンデムツーリングの時でも安心ですね。
【隼の優しさ④】シート高800mmで足つき性も良好!しかもスタンドが出しやすいところ
見た目の大きさに圧倒されるけど、隼は足つき性が良好なところもかなり好きなポイントです。
シート高は800mmと数値的にも低めなところに加えて、シートの前方が絞られ、足を地面に降ろす部分がかなりスリムになっているので数値以上に足が着きやすいんです。
172cmのライダーが両足で跨るとカカトが2〜3cm程度浮くくらいですが、跨ったまま後ろへ退がるのも容易にできるほど不安なく足を着くことができます。
さらに良かったのが、ライダーが跨った状態からサイドスタンドがすごく出しやすいこと。
もちろん車種にもよるけれど、足元を覗き込みながらサイドスタンドの位置を確認しつつ、ステップを避けながらスタンドを引っ張り出すこともわりと多くあります。
でも「隼」は目視しなくてもサイドスタンドが出せるほど、スタンドが自然で引き出しやすい位置にあるので、車体を停車させる時にストレスが少ないんです。
【隼の優しさ⑤】シートが快適でロングツーリングも抜群なところ
隼はメガスポーツでありながら、長時間のツーリングでも身体が疲れにくいように、幅広で座り心地が抜群のシートが採用されています。
やや肉厚で固すぎず柔らかすぎないクッション性があり、一般的なスポーツバイクに比べるとシート形状が水平に近くらいフラットになっています。このシート形状のおかげでスポーツバイクにありがちな、乗っていると徐々に前方へズレてくるような感じもほとんど感じませんでした。
ライダーが座る位置の自由度も高いので、ワインディングなどで身体を積極的に動かしてシート荷重するような乗り方もできるし、逆に高速道路を長時間走るようなドカッとシートに座り続けているシーンでも疲れにくい形状になっています。
足を置くステップも絶妙の位置で、脚の曲がり具合がキツすぎないところも長時間のツーリングで疲れにくいポイントだと思います。
【隼の優しさ⑥】クルーズコントロールで高速移動が快適なところ
隼が一度乗ったら降りたくなくなるほど快適なもうひとつのポイントとしては、やはり「クルーズコントロール」が備わっているところ。
当然ながらバイクツーリングって「行き」があれば「帰り」もあるわけで、スタート時と帰りの身体の疲れ具合や気分なども自ずと変わってくると思います。
例えば高速道路を100km/h巡行したいときなど、任意に設定した速度でオートクルーズをセットすれば、アクセルをずっとひねっていなくても一定速度で走り続けることができます。
ツーリング先で楽しんだ帰りに「家まであと300kmか……」と思うのか、「あと300kmなら楽勝!」と思うのか。隼は後者ですが、その“気分の違い”を感じられるのはクルーズコントロールの存在が大きいかも。
のんびり気分でゆっくり走りたい時などにもクルーズコントロールは本当に重宝しました。
【隼の優しさ⑦】ロングツーリングも考慮して大きな荷物が積みやすくなっているところ
隼のリアシートを含むリア部分の形状が『荷物の積載がすごくしやすい』のも心に刺さりました。
筆者の私は、例えば自分のバイクを購入するとき「荷物がどれくらい積載できるか」を必ずチェックします。
泊まりのツーリング以外にも、キャンプやアウトドアにバイクで出かけることが多いので、あまり荷物の積めないバイクは、愛車として購入するとなるとどうしても選択肢から外れてしまうのですが、隼はこう言った細かいこだわりポイントも見事クリアしていました。
ドローコードのフックをとめている前側は、タンデムステップのフックやフレームと接続している隙間に簡単に引っ掛けることができます。
タンデムもしやすいように隼のリアシートはけっこう幅広で、しかも水平に近い形状なので、かなり大きい荷物を積載しても全く問題無い……どころか、むしろ大きな荷物が積みやすいバイクでした。
【隼の優しさ⑧】陰ながらサポートしてくれる電子制御技術が盛りだくさんなところ
隼にはライダーをサポートしてくれる「電子制御システム」が数多く備わっています。それはもうたくさんありすぎて、ひとつずつ紹介しているととんでもないことになるほどに……
なので、ここでは主にパワーモードについて解説します。
特に電子制御で出力特性などが変更できる『SDMS-α(スズキドライブモードセレクターアルファ)』は、プリセットされた「A(アクティブ)」「B(ベーシック)」「C(コンフォート)」の3つのモードに加え、ユーザーが任意に設定できる「USER」の4種類からエンジンの特性を選択でき、パワーモードやトラクションコントロールの介入度を統合的に切り替えることができます。
しかしどのパワーモードでも低回転域からスムーズに扱えるようになっていて、例えば、通常はベーシックな「B」モードに設定しておいて、渋滞時や雨天時などは出力が穏やかな「C」モードに、高速道路やアクティブに走りたいときは「A」モード、といったように瞬時にキャラクターを切り替えられます。シチュエーションや気分などで、“その時にあった走り”を楽しむことができるんです。
自分好みにセットできる「USER」も3パターンまで保存できるのがスゴい……
【隼の優しさ⑨】複雑な電子制御システムが左スイッチボックスだけで簡単操作ができるところ
たくさんの電子制御システムが備わっているのは嬉しい限りなのですが、その分ライダーもひとつひとつのシステムを理解しなければいけないですし、そのための操作が複雑になってしまう場合があります。
でも、隼は多くの電子制御システムが備わっているのに、一度操作してみるだけで説明書が不要になるくらい直感的に分かりやすい仕組みになっているんです。
走行中の電子制御システムの切り替えは「パワーモードの切り替え」と「クルーズコントロールのオン・オフ」のみが行えるようになっていて、ライディング時は走りに集中できるようになっているのもシンプルでいい。
ライダーがバイクを操る楽しみを損なわないように直感で操作できるのは、理想的な電子制御システムと言えるでしょう。
【隼の優しさ⑩】20Lの燃料タンクと燃費性能で航続距離も長いところ
最後となりますが、個人的にもうひとつツーリングバイクに求めるものがあります。それは燃費性能も含めて「ガソリン満タンで大体どれくらい走れるのか?」ということ。
隼は20Lも入る大容量の燃料タンクが備わっていますが、前回の記事で給油ランプが点滅するまでの約312.4kmを走った時の燃費は、満タン法で計算すると19.048…km/Lでした。それでも、まだ約3.4リットルのガソリンがタンク内に残っていた計算になります。
計算上ではガソリンを使い切るまで走った場合、航続距離は377km以上ということに。
大排気量1339ccの高出力4気筒エンジンという部分を考慮すると低燃費と言えますし、何より航続距離が長いのでツーリング先で頻繁にガソリンを入れなくても走り続けられるのはとてもありがたいですね。
同じバイクに10年以上乗るなら本当に好きなバイクを選びたいから……
今回、隼に一週間乗ってみて、個人的に好きなポイントを数えてみたら10項目もありました。このまま乗り続ければもっと見つかるような気がします。
見た目の大きさやスズキのフラッグシップとしてのイメージから、最初は乗るのを躊躇していたバイクでしたが、乗ってみたらこのアルティメットスポーツの半分は優しさで出来ていました。
(下に続きます)
バイクを購入する時って、カッコいいバイクや欲しいバイクがいっぱい候補に上がると思います。
でも例えば……10年以上乗るって考えたら……
こういうバイクが最終的には『正解』なのかもしれません!
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