スズキは数字よりも『隼』らしさを優先した
現代的な洗練されたスタイリングに、数々のパーツのアップデートや電子制御システムの搭載など、新型『隼』のトピックスは多岐にわたります。
【ディテール編】からの続きです
ですが、やはり最大のトピックスはパワーでしょう。
排気量は従来と同じく1340ccのまま。そしてパワーは最高出力190馬力となりました。2代目の197馬力よりも最高出力はダウンしているんです。
『最高出力ダウン=遅い』ではない
だけど、ここで勘違いをしてはいけないのが最高出力ダウンで隼が『遅くなった』ということではないこと。
こちらの表をご覧ください
注目すべきは4つ。
最高出力が190馬力になっており、最大トルクも若干の減少となりますが、最大トルクの発生回転数が200回転、低くなっていること。
そして0-200mのタイムは2代目よりも0.1秒短縮されたこと。
そして0-100km/h加速のタイムが0.2秒短縮されたこと。
最後に名目上のトップスピードは歴代『隼』と同じく最高速299km/hのまま、ということです。
新型『隼(ハヤブサ)』は低~中速を大幅に強化した
このことからわかるのは新型『隼』は最高速299km/hには一切の妥協をせず、その範囲内で強化を施してきた、という事実。
しかもそれは、特に厳しいことで知られる排ガス規制『ユーロ5』に適合させてのことです。
そして今回、新型『隼』は特に6000回転までのパワー&トルク特性に、かなり強化を施しているんです。
それがこちらの表です。
赤色の線(新型・隼)とブルーの線(2代目・隼)を比較してください。
まずパワー(馬力)の部分でも低~中回転域では新型隼が上回っていることがわかります。
そして、それよりも衝撃なのがバイクを加速させる力『トルク』です。
上の表の『Torque』の部分を新型と第二世代のみで比較すると……
私(北岡)は、これを見て大きな衝撃を受けました。
最高に速いと思っていた愛車の2代目隼様のトルクカーブが、中速域でこんなに大きな谷があったなんて……溢れるようなパワーで、まったく気づいていないレベルでした。
そして……新型が、スゴい。
2代目の隼で大きく落ち込んでいるトルクカーブを、理想にかなり近い形で改善しています。
これたぶん……実際の速度以上に、ライダーの体感として(加速力など)圧倒的に速くなっていると感じる可能性が高いです。
ちなみに、この低~中速域の強化には新しいマフラーも大きく貢献しているとのこと。
その他、エアクリーナーボックスも新形状となり容量アップ。吸排気によるパワー特性のコントロールには大きくこだわっています。
2代目『隼』オーナーとして、勝てる気がしない
私(北岡)はこの新型『隼』の表を見た瞬間に『これはもう2代目の隼じゃ絶対に速さは敵わない』と感じました。
もちろん隼の魅力は絶対的な速さではありません。そのことはオーナーとして重々承知。
だけど仮に、私がふたりいて「よーい、ドン!」でサーキットで競争したら……完全に負けると思う。
まずスタートダッシュ。これはもう低~中速域を強化されたエンジンと電子制御ローンチコントロールで100%勝てません。新型『隼』はその電子制御もあって、先の0-100km/h加速や、0-200m加速のタイムを安定的に出せるはずだからです。
そして、コーナーも同じ。
先の【ディテール編】でもお伝えしましたが、ブレーキは大幅に強化されていますし、IMUユニットによる電子制御で、持てるパワーを存分に路面に叩きつけられる新型『隼』は、私の愛機となる2代目『隼』を1コーナーごとに引き離していくイメージしか持てませんでした。
直線がおそろしく長く続くようなシーンでは、すこし差を詰められるかもしれませんが、その時に新型『隼』とは埋められない差がついているはず。それに、トップスピード299km/hを出せる場所なんて、国際規格のサーキットでもなかなかありませんからね。
なによりも新型『隼(ハヤブサ)』が大切したのは耐久性
そして驚いたことに、今回の新型『隼』のエンジンにおいて、最も重要視されたのはエンジンの耐久性のようなのです。
そのために、呆れるほどの努力をスズキは行っています。
新形状のピストンは26gの軽量化、そして新しいコネクティングロッドも3gの軽量化。
併せて29g。たったの29gと思うかもしれませんが、これらのパーツはエンジン内部で毎分10000回転以上の恐ろしいスピードで稼働している部品です。
わずかな軽量化でもエンジンの負担は大幅に軽減され、エンジン耐久性の向上やパフォーマンスアップに貢献します。
そしてエンジンオイルの通路はスーパースポーツGSX-R1000の技術を応用した変更が加えられています。
オイル流量と圧力は従来比で54%もアップ。
安定的にオイルを供給できるので、エンジンの負担は大幅に軽くなっているはずです。
細々とした変更は膨大な量で、すべてをお伝えしたら、記事がとんでもなく長くなってしまうので、ここでは部分的な紹介に抑えておきます。
あくまでスズキらしく、隼らしく
隼は今の時点で既に伝説的。生ける伝説です。
おそらくスズキは単純にパワーアップさせたところで、それが新型『隼』でいいのか?と自問したのでしょう。
そこで選んだのが『隼らしさ』を強化するということ。そのための190馬力です。
普通はなかなか、この決断はできません。だってパワーを下げたら、がっかりする人も出てくるだろうから。
だけどスズキは流石です。『パワーダウンした』と言われることを恐れて、どこもやれなかったそれを、やってきました。
そして、先代よりもスムーズに、速く。そしてタフにしてきたんです。
あくまで隼は隼として、それを正しく進化させるための190馬力。まっすぐブレがありません。
だから私(北岡)は逆に楽しみになってます。
190馬力の新型『隼』が、どんなバイクに進化しているのか!?
日本の道を走れる日が来るのが、今から待ち遠しくて仕方ありません!
190馬力になった新型『隼』って、ぶっちゃけどう思った?
スズキ新型『隼(ハヤブサ)』のその他の記事はこちら
【スタイリング編】
【ディテール編】
【電子制御編】
【とにかく写真が見たい人へ!】