『隼』に搭載されている電子制御「S.I.R.S」の種類はいくつ?
スズキのラインナップするオートバイのうち、一部のモデルにはスズキの開発した高性能電子制御システム「スズキインテリジェントライドシステム」、略して「S.I.RS」が搭載されています。
以前、私がスズキのフラッグシップモデルであるアルティメットスポーツ『隼』に試乗した際、あまりの乗りやすさに驚きを隠せませんでしたが、もちろん排気量1339cc、188PSのモンスターバイクを乗りやすいと感じるには、それなりのアシストが介入しているハズ……
その時の試乗記事では「おそらくたくさんの電子制御に助けられている」みたいな感じでさらっと流してしまったけれど、『隼』には実際どれくらいの電子制御が搭載されているのでしょうか?
今回は『隼』に搭載されているスズキの電子制御システム「スズキインテリジェントライドシステム(S.I.R.S)」を紹介します!
……ちょっと内容がボリューミーですが、ご興味のある方はお付き合いくださいませ!
(下に続きます)
SDMS-α
スズキのバイクで1番聞き馴染みのある電子制御「SDMS(スズキドライブモードセレクター)」ですが、『隼』はさらに進化した「SDMS-α」を搭載。
このシステムは、以下で紹介してくS.I.R.S、「パワーモードセレクター」、「アンチリフトコントロールシステム」、「双方向クイックシフトシステム」、「エンジンブレーキコントロールシステム」、「モーショントラックトラクションコントロールシステム」の5つの電子制御システムを統合コントロールするシステムです。
あらかじめ用意されたプリセットの「A」、「B」、「C」モードに加え、ライダーの好みに合わせてセッティングできる「U1」、「U2」、「U3」のスロットを用意。
ユーザープリセットは左ハンドルのスイッチでモードと設定を変更可能で、選択中のモードはインストルメントパネルに表示されます。
……って、まだひとつ目の紹介なのに、すでに別のS.I.R.Sが5つも登場しているのだが……。
パワーモードセレクター
上記の「SDMS-α」が統括制御するS.I.R.Sの筆頭が「パワーモードセレクター」。
ただ、こちらも路面状況や走行条件に合わせて、エンジンの出力特性を3つのモードから任意に選択でき、モード1が最もスロットルレスポンスがシャープな特性で、モード2は中間スロットル開度までのピックアップをマイルドにした特性。3はフルスロットル時の最大出力をモード2より絞った特性になっています。
双方向クイックシフトシステム
S.I.R.Sの中で最も恩恵を体感しやすいシステムが「双方向クイックシフトシステム」、いわゆるクイックシフターです。
ライダーがクラッチやスロットルの操作を必要とせずにシフトアップ/シフトダウンが可能で、スポーツライディング時はもちろん、市街地走行でも快適性が向上します。
で、ここから知らなかった機能なのですが、隼のクイックシフターは2段階+OFFのモードから選択でき、「モード1」はシャープな感覚の「スポーツ」モード。「モード2」はソフトなシフト感の「街乗りモード」となっているそうです。
エンジンブレーキコントロールシステム
スロットルを全閉にした際に発生するエンジンブレーキの強さを制御してくれるシステムが「エンジンブレーキコントロール」。
……そんなことまでできるのか……。
こちらは3段階+OFFのモードから選択できて、モード3で一番エンジンブレーキが小さくなり、システムOFFで最大になります。
このシステムで減速中のエンジントルクを制御し、シフトダウン時等のエンジンブレーキによるリアの挙動を抑制してくれます。
乗ったときは意識してなかったけど、これは結構重要だったかも……?
モーショントラックトラクションコントロールシステム
舌を噛みそうな長い名前ですが、簡単に言えばトラクションコントロールです。
前後輪の車輪速センサー、スロットルポジションセンサー、クランクポジションセンサー、ギアポジションセンサー、加えて車両の動きや姿勢の情報から、リアタイヤのスピンを検知した際にエンジンの出力を低減してくれるシステムです。
……センサー多すぎぃっ!
しかも「10段階+OFF」と細かな段数で調整でき、モードの数値が大きいほどシステムの介入が大きくなり、よりタイヤのスピンが小さくなるよう制御されます。
アンチリフトコントールシステム
こちらは名前通り『隼』の圧倒的パワーによるフロントのパワーリフトを抑えながら最大限の加速を得られるよう制御してくれるシステム。
10段階+OFFからモード選択ができ、数字が大きくなるほど介入度が上がります。
これOFFにして全開加速とかしたら……たぶん離陸する……⁉
IMU(Inertial Measurement Unit)
電子制御と言われてよく聞く単語「IMU」は車両の動きと姿勢を検知するシステムで正式名称は「Inertial Measurement Unit」。※イナーシャル・メジャーメント・ユニット
『隼』はボッシュ製の6軸IMUを採用し、ピッチ、ロール、ヨーと呼ばれる3軸の角速度センサー(ジャイロメーター)と前後、左右、上下の3軸加速度センサーを1つのユニットに装備しています。
車両の動きをリアルタイムに検出することによりS.I.R.Sのシステムを制御する非常に重要なシステムのひとつとなっています。
……ほんとに、このバイクにはいくつセンサーと呼ばれるものが付いているんだ⁉
クルーズコントロールシステム
試乗した際にもかなりお世話になったシステムのひとつ「クルーズコントロールシステム」。
ライダーがスロットルを操作することなく設定速度を維持できるシステムで、高速道路走行時や長距離移動において疲労を大きく軽減してくれます。
スロットル操作なしに設定された速度の巡行ができ、スイッチボックスのボタンでアップ・ダウンの速度調節が可能。また、セットした速度をキャンセルした後に、前回セットした速度に戻すことができるレジューム機能も搭載しています。
モーショントラックブレーキシステム
6軸IMUとABSを組み合わせたものが「モーショントラックブレーキシステム」。
ブレーキングの際に前後の車輪速センサーとIMUからABSがの介入が必要かどうかを判断し、介入する場合はその挙動を高度に制御するシステムです。
ちなみに、『隼』は前後ブレーキを連動させるコンバインドブレーキシステムも搭載していて、ABSとコンバインブレーキシステムを高度に連携させる「モーショントラックブレーキシステム」により、車輪をロックさせずに効率よく減速することを可能にしているんだそう。
なんだか言葉ではすごいことをやっているのはわかるけど、そろそろ実感が湧かなすぎるぞ……。
ヒルホールドコントロールシステム
上り坂でブレーキをかけ完全に車体が停車した際にIMUが姿勢を検知。ブレーキを離しても30秒間はリアブレーキが作動したままにする坂道発進の支援システム。
再スタートする際もスムーズな発進をサポートしてくれて、発進&加速することで自動的に解除されます。また、フロントレバーを2回素早く握ることでもキャンセル可能。
……この機能めちゃくちゃ助かるんですよ……重いバイクだと特に。
スロープディペンデントコントロールシステム
初耳だったこのシステムは下り坂でのブレーキングの際に、IMUが検知した車体姿勢と傾斜角度の検知データから、勾配に応じてABSの作動を最適化し、後輪のリフトを抑制するシステム。
よし、そろそろ何言われても驚かなくなってきたぞ……。
ローンチコントロールシステム
こちらはクローズドコースでの走行の際に、停車状態からの発進時の加速をサポートするシステムで、アンチリフトコントロールシステムとの相乗効果で安定した滑らかな発進加速を実現します。
クローズドコース限定でしか使えないでしょうけれど、これがあれば誰でも理想のロケットスタートがキメられるってことなのか? やってみたい。怖いけど。
アクティブスピードリミッター
スズキの二輪車で初めて採用された、ライダーが任意の速度にスピードリミッターを設定することができるシステム。
『隼』は圧倒的排気量&スタビリティでいつの間にかとんでもない速度が出てしまっているようなバイクなので、この機能は実はかなり重要なのかもしれません!
エマージェンシーストップシグナル
最後に紹介するのが、「エマージェンシーストップシグナル」
こちらもスズキの二輪車初搭載で、約55km/h以上の速度から急ブレーキを掛けると前後のターンシグナルがビカビカビカッっと素早く点滅し、後続車に注意を促すことのできるシステム。
危険察知からの急ブレーキというのは後続車からは意外にわかりづらかったりするので、安全対策としては非常に頼もしい機能です。
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以上のように、『隼』には今回紹介しただけで14個の「S.I.R.S」が搭載されています!
14……すごくないですか⁉
正直ここまでの間にみんな離脱してしまっているような気がするけど……自分も途中からあまりの情報量に頭が変になりそうでしたし(笑)
でも、これだけの数の電子制御システムがライダーの走りを支えてくれていると考えると、『隼』のような一見敷居の高そうなバイクでも乗れそうに思えてきませんか?
もちろん『隼』以外にも「S.I.R.S」を搭載したモデルは多数ラインナップされているので、是非チェックしてみてくださいね!