SUZUKI GSX750E(1980年)
「空冷4ストロークDOHC16バルブ4気筒を積んだ、走る闘牛」
スズキ初の750cc空冷4ストロークDOHC4気筒エンジンを搭載した大型二輪車として、1976年に誕生したGS750/E。その後継モデルとして1980年に登場したのが、今回紹介する「GSX750E」です。
当時の日本国内には排気量が750ccまでしか販売できないというメーカーの自主規制があったため、輸出モデルとして先に海外で発売された「GSX1100E」のスケールダウン版として国内発売されたモデルでもあります。
特徴的な四角いヘッドライト、重厚で存在感のあるデザインや車体も合間って、ファンからは“牛”を意味する「ベコ」の愛称で親しまれたモデルです。
ちなみに、東北地方の会津若松に“幸運を運ぶ牛”として、首をちょこんと触るとゆらゆらと動く「赤べこ」と呼ばれる郷土土産があることから、カラーリング別に“赤ベコ”や“青ベコ”などと称されていました。
しかし、ベコという可愛らしい愛称とは対称に、マシン性能やメカニズムは当時のスズキが誇る技術が惜しみなく投入されていました。
空冷4ストロークDOHC 4バルブ直列4気筒は、最高出力を8500回転で69馬力、最大トルクを7000回転で6.2kg-mを発揮するパワフルなエンジンでした。
また、前後に穴空きのディスクブレーキの採用し、当時のスズキGPマシン「RGB500」からフィードバックした制動時のノーズダイブ現象を抑える「ANDF(アンチ・ノーズ・ダイブ・フロントフォーク)」を市販車で搭載。しかも、このシステムはスズキが世界初!
しかし、その重厚な見た目や車体、DOHCの並列4気筒エンジンを搭載していることから「重量が重い…」というイメージがありましたが、GSX750Eの乾燥重量では229kgほどで、ベースモデルのGS750(乾燥重量:221kg)と比べても8kg程度しか変わりませんでした。
その後、1983年には、ハーフカウルを装備してスタイリングを一新させた「GSX750E」が登場。
デザインだけではなく、骨格となるフレームも全く別物となる角形・丸形パイプを併用したダブルクレードルフレームを採用し、フロントに16インチ、リアに17インチのロードタイヤを履くという、よりスポーティなモデルとして進化しました。
その後の750ccGSXシリーズは、エンジンの水冷化や度重なるモデルチェンジで、現在の「GSX-S750 ABS」に受け継がれて行きました。
現行車に例えるならどんな車種?
さて、ここからはあくまでもスズキのバイク編集部 岩瀬の個人的な主観で「現在のバイク」に置き換えてみる妄想企画です。
今回紹介したGSシリーズのGS750は、1980年に登場した「GSX750E」の登場で“GSXシリーズ”へと進化して行きました。
スズキのスポーツバイクの代名詞となったGSXシリーズは、その後レーシングスタイルのマシンは「GSX-Rシリーズ」、ストリート&ネイキッドスタイルのマシンは「GSX-Sシリーズ」へ区分されています。昨年の「GSX-S750」の生産終了にてスズキのナナハン4気筒の歴史は一旦、途絶えてしまいましたが、今回はそのバイクと比較してみたいと思います。
スーパースポーツ「GSX-R750」ゆずりのエンジンを搭載し、アグレッシブなスポーツ走行も楽しめるストリートスポーツモデルとして2017年に初登場しました。
「スポーツライディング」や「街中のライディング」「ぬれた路面」などで3段階から切り替えられる選択可能なトラクションコントロールも採用し、スタータースイッチをワンプッシュするだけでエンジンを始動されることができるスズキイージースタートシステムやABSも標準装備されています。
スズキの「GS」シリーズは、更にスポーツ性能を高めて高性能化された「GSX」シリーズに受け継がれていきましたが、なんとなくこの「GSX-S750」に近いものを感じる気がしています。
最終の2022年モデルは、レギュラーカラーとなるトリトンブルーメタリックに加え、スタイリッシュなグレースタイルの「オールトグレーメタリックNo.3/グラススパークルブラック」とシックな「マットブラックメタリックNo.2」がラインアップされ、3色展開になっています。
残念ながら『GSX-S750』と共にスズキ伝統のナナハン4発は姿を消します。
残すところは国内の販売店在庫のみですが、傑作スポーツ『GSX-S750』を新車で手に入れることができるのはこれで最後となりますので、どうぞお見逃しのないようお願いします!