SUZUKI DR750S(1988年)
「海外でも“クチバシ”の愛称⁉︎ ファラオの怪鳥と呼ばれたビッグオフ」

SUZUKI DR750S(1988年)※輸出仕様
現代のVストロームシリーズのように、まだアドベンチャーバイクというジャンルが確立されていなかった時代は、未舗装路の走行も可能な大排気量のデュアルパーパスモデルは“ビッグオフ”などと呼ばていました。
1970年代後半から80年代に入ると、世界一過酷なモータースポーツ競技と言われる「パリ・ダカールラリー」通称“パリダカ”と呼ばれるデザートラリーレースが世界中で爆発的な人気となり、スズキのワークスチームも1987年からパリダカに挑戦することになります。
フランス・スズキの主導でダカール・ラリーに参戦するデザートプロジェクトが始動。パリダカに参戦するほぼ全てのライバル車が“2気筒エンジン”を搭載するなか、オフロードでは“より軽さが武器となる”と考えたスズキは830ccの油冷“単気筒エンジン”を搭載したワークスラリーマシン「DR-Zeta(ゼータ)」で世界一過酷なデザートレースに挑みました。

当時のラリーマシンは多少重くなってもトップスピードが稼げる2気筒エンジン(800cc前後)の方が圧倒的に有利と言われるなか、油冷830cc単気筒エンジンのDR-Zetaは参戦2年目の1988年に見事優勝!
パリダカの別称“ファラオ・ラリー”に突如として現れ、下馬評を覆して見事勝利した“クチバシ”の単気筒バイクは、いつしか「ファラオの怪鳥」と呼ばれるようになりました。
ちなみに、現代のアドベンチャーバイク・デザインの主流でもあるフロントフェンダー付きのいわゆる“クチバシ”スタイルは、スズキのDR-Zetaが最初なのでは?と言われ、海外でも“アヒル”や“カモノハシ”を意味する「DUCK BILL」と呼称されているんだとか。

SUZUKI DR750S(1988年)※輸出仕様
そんなスズキのラリー用ファクトリーマシンDR-Zetaのレプリカモデルとして誕生したのが今回紹介する「DR750S/800S」です。
ダカール・ラリーの厳しいレースを戦ったノウハウを生かして開発された「DR750S」は、軽量コンパクトでメンテナンス性の良いスズキ独自の750cc油冷4ストロークSOHC単気筒エンジンを採用。
ビッグシングルに対して2つのキャブレターで混合気を供給する、画期的なデュアルスリングショットキャブレターを装備することで、低中速から高速域まで充分なトルクとクイックなレスポンスを実現していました。
DR800S(1990年)

DR800S(1990年)※輸出仕様
2年後の1990年にはピストンストロークを6mm長くし、排気量を52cc大きくしてエンジン性能に余裕を持たせた「DR800S」にモデルチェンジ。
最高出力は52.5ps/7,000rpm、最大トルクは6.06kgm/5,500rpmを発揮するパワフルな800cc(779cc)のビッグシングルを搭載しながらも、冷却にスズキ独自の油空冷システムを採用することで乾燥重量185kgという軽量を実現していました。
DR750S/800Sは共に輸出仕様モデルのため、国内で正式には発売されてはいませんが、逆輸入車というかたちで日本でもDR-BIGの相性で親しまれるモデルとなりました。
現行車に例えるならどんな車種?
さて、ここからはあくまでもスズキのバイク編集部 岩瀬の個人的な主観で「現在のバイク」に置き換えてみる妄想企画です。
DR750S/800Sのようなビッグオフは、現代ではアドベンチャーバイクとして、そのスタイルがVストロームシリーズに受け継がれています。
同排気量モデルとしてはVストローム800シリーズと比較すべきかもしれませんが、DR750S/800Sシリーズは当時の最大排気量のビッグオフでしたので、現代ではフラッグシップ・アドベンチャーの「Vストローム1050」シリーズが相応しいのかもしれません。

Vストローム1050XT ※写真は2024年カラーです。
四角いヘッドライトやウインドスクリーン、フェンダーやタンクシュラウドなど、まさにDR-BIGが現在に蘇ったかのようなデザイン。
ご存知、現在のスズキのフラッグシップ・アドベンチャーモデルである「Vストローム1050/XT」シリーズのデザインには、このシリーズのモチーフが多く取り入れられていると言われています。
当時、DR-ZやDR-BIGを担当したデザイナーが、Vストローム1050シリーズの開発チームに加わっていることもあり、スズキの「伝統」を受け継いだデザインになっているのが分かります。
(下に続きます)
Vストローム1050(2025年モデル)

Vストローム1050(オールトグレーメタリックNo.3/マットブラックメタリックNo.2)車両価格:170万500円(10%消費税込み)

Vストローム1050(グラススパークルブラック/マットブラックメタリックNo.2)車両価格:170万500円(10%消費税込み)

Vストローム1050(マットスティールグリーンメタリック/マットブラックメタリックNo.2)車両価格:170万500円(10%消費税込み)
2017年に登場したVストローム1000/XTシリーズが2020年にフルモデルチェンジされ「Vストローム1050/XT」シリーズへとモデルチェンジされたばかりでしたが、2023年2月には、フロントを21インチ化した「Vストローム1050DE」も登場しました。
“デュアル・エクスプローラ”を意味する「DE」の名で登場し、各種のブラッシュアップや電子制御システムを強化して大幅リニューアルを果たしています。
衝撃吸収性を高めるためにハンドル幅を左右20mmずつワイド化し、エンジン下部のアルミ製スキッドプレートなど、フロント19インチのワイヤースポークホイール仕様だった「Vストローム1050XT」をさらに進化させた、スズキのフラッグシップ・アドベンチャーモデルです。
Vストローム1050DE(2025年モデル)

V-STROM1050DE(パールテックホワイト/グラススパークルブラック)車両価格:179万3000円(10%消費税込み)

V-STROM1050DE(チャンピオンイエローNo.2/グラススパークルブラック)車両価格:179万3000円(10%消費税込み)
Vストローム1050DEの2025年モデルのカラーリングは、スズキイエローが印象的な「チャンピオンイエローNo.2/グラススパークルブラック」と、鮮やかなトリコロールカラーが美しい「パールテックホワイト/グラススパークルブラック」の2色展開。
いずれのカラーも179万3000円(10%税込)で、2025年2月17日より発売が開始されています。
スズキ「ビッグオフ」のDNAは、現代のVストロームシリーズにしっかりと継承されているように感じます。








