GSX-S1000Fの『パワー』と『軽さ』をライディングポジションで活かす
最高出力148馬力。車両重量214kg。
【前編】で繰り返し言ったことですけど、GSX-S1000Fの本質は、快適ツーリングバイクではなく『アップハンドルのスーパースポーツ』です。
公道を走るスポーツバイクとして、これ以上のパフォーマンスが必要なのか? って思えるほどの性能を持つGSX-S1000Fですが、ことワインディングに関して言うならば、最大の武器はパワーよりも、その乗車姿勢にあると思います。
日本のワインディング/峠道は基本的にツイスティで、長いストレートなんて滅多にありません。
バンク角に差はあれど、右に左に、常に車体を切り返し続けるような走り方になります。
そんなシチュエーションにおいてアップハンドルで視界が広いというのは、あなどれないアドバンテージです。
連続するコーナーを次々とクリアしていく峠道では、自分の理想とするフォームでアプローチできないこともしばしば。
なので、イン側に腰をズラすフォームだけじゃなく、時にはリーンアウトも使うし、上体だけを入れたリーンインで曲がることもある。
臨機応変。ワインディングの鉄則ですよね。
時には腰から下でバイクを振り回すように。
アップハンドルのGSX-S1000Fは、そういうアクションの自由度がとても高いバイクです。
ひとつのコーナーを『点』として切り取るならセパレートハンドルで、低く構えられるバイクが有利でしょうけれど、実際の峠道はそんなにお行儀の良いものじゃありません。連続するコーナーに加えて、ギャップもあれば、石コロが落ちてたり、砂が浮いてたりもする。
次のコーナーに対して、常に万全の態勢でアプローチできるとは限らないのが峠道。
だからこそ、それを『いかに綺麗にさばけるか』が醍醐味です。
なので、一発の速さにはあまり意味がありません。危ないですしね(笑)
そうなるとGSX-S1000Fの上体を起こせるライディングポジションは、アイポイントも高く、視野が広いのは安心。
それでいてスーパースポーツ譲りのエンジンとフレームがストリート向けにチューニングされている訳ですから、時としてワインディングではスーパースポーツに匹敵する走りを見せるんです。
スズキらしい『扱いやすさ』はGSX-S1000Fにも健在
そして、その走りを支えるのは『スズキらしさ』です。
スーパースポーツ譲りのエンジンでありながら、スズキらしく低~中速域が力強い。しかもフラットにパワーが出る特性なのでスロットルが開けやすいです。
ライダーが必要とする時に、必要なパワーを瞬時に取り出すことができて、積極的に安定感が作れる。これができるバイクは安心感が違います。
そのパワーを受け止めるフレームは、ルーツがスーパースポーツだけあって、かなりのがっしり系。ここもやっぱりスズキ車らしいポイントで、148馬力のハイパワーに負けない高い剛性を感じさせます。
そのフレームに合わせ、スポーティさ優先で固めにセットされた前後サスペンションは、わかりやすいタイヤグリップをライダーに感じさせてくれます。
だけど、ここで逆にすこし気になったのはグリップ感が明確な裏側で、加速時の限界ラインというか『ここから先は危なそうだな』という気配がつかみにくいところ。
これは単純に、わたし(北岡)の腕前ではバイクのパフォーマンスを引き出し切れていないだけでしょう……GSX-S1000F速すぎ(笑)
まぁ、トラクションコントロールも標準装備なので、そこは優秀な電子制御におまかせです。
ちなみに言っておくと、兄弟車であるネイキッドバージョンの『GSX-S1000』に比べると、Fのほうがすこしフロント側がしなやかに動いてくれる印象があります。
峠のGSX-S1000Fは相当高いパフォーマンスを発揮する
前傾姿勢で視野が狭くなりがちなスーパースポーツに対してはライディングポジションによる自由度で立ち向かい、1200ccとか1300ccとかの大排気量車には重量214kgの軽さで優位に立つ。
このバイクの走りの中心にあるのは、最終的にはエンジンでしょう。
(下に続きます)
低速から力強いのに、高回転まで一気に回る。だけどコンパクトで軽さにも貢献。
GSX-S1000Fは本当に速いバイクです。
このバイクがバックミラーに勢いよく迫ってきたら、スポーツバイク乗りの皆様はご注意ください。
走るステージによってはスーパースポーツさえ脅かす……
GSX-S1000Fは、その力を確実に持っているバイクです!