スズキの最上級スーパーツポーツは街中で意外にも寛容だった
先輩のNO!に食い下がり、なんとかGSX-R1000Rの試乗権利を手に入れた私(石神)ですが、流石に200万円越えのバイクは少し緊張します。
ですが怖がっていても仕方がないので、街に繰り出すべく跨ります。
足つきは、まぁ想定した通りと言いますか。カタログスペックでのシート高は825mm。
身長が約175センチの私で両足の踵が少し浮くといった感じ。
前回乗った新型カタナとカタログ数値上のシート高は一緒。ただ、クリップオンハンドルによるポジションの違いが大きく、姿勢がかなり前傾になります。なので、どうしても踵が上がり、新型カタナに比べ体感的なシート高は高く感じました。
片足をステップに乗せて支えるような場面で不安はありませんが、エンジンを停止した状態で乗ったまま移動するにはつま先でヨイショ、ヨイショと押すことになり一苦労。
少しでも地面に傾斜があると、跨ったままでのバックなどは難しそうです。
車両重量に関してはカタログ数値203kg。やはり200kgを超えてくると引き起こしでは少し重さを感じますが、リッタークラスの大型バイクという点で観ればとても軽い部類に入るのでしょう(ほかの大型バイクにあまり乗ったことないんでわかりませんが……)
実際、数値上ではスズキが展開するリッターバイクの中でダントツに軽いです。
形状上、タンクの張り出し等により身体で車体を支えやすかったりもするため、バイクを降りた状態での取り回しはしやすい印象でした。
でも、大型慣れしてない人間にとってはやっぱりちょっと緊張します……
といった感じで第一印象を楽しみつつスターターを押し込むと、キュキュキュッと数回セルが回った後、ヴォンと4気筒らしい音を奏でてエンジンが始動。
前回の新型カタナは耳心地よくチューニングが施された音でしたが、R1000Rはもっと低く響く迫力のあるサウンド。“性能上出ちゃう音”とでも言うべきか、音から「きっとこれは凄いバイクだ」というのが伝わってきます。
そしていざ発進した瞬間、強烈なパワーの立ち上がりに驚かされました。
自分の中ではけっこう慎重にアクセルを開けたつもりだったのですが、それでもバイクが前にすっ飛んでいこうとする感じ。
GSX-R1000RにはA、B、Cの3つのドライブモードが用意されていて、この時はいちばん出力の上がり方が鋭いAモード。
リニアなスロットルレスポンスにはじめは戸惑いましたが、走り出してしまえば後は慣れ。アクセル開度やクラッチの間隔をつかむ頃には別の感想にとらわれていました。
「あれ? 案外乗りやすいぞ……?」
偏見と思い込みになりますが、スーパースポーツはライディングポジションや足つき等も鑑みて、街中で乗るには大分苦労しそう、なんて思ってたんです。
しかし、GSX-R1000Rは意外にもにスイスイと街中を駆け抜けることができたのです。
大型バイク初心者も安心のローRPMアシストなるものが搭載されているためか、低速時でも操作性が高く、ストップ&ゴーの多い街中では前傾姿勢も言うほど苦になりません。
見た目から「なんかすごそう」な前後サスペンションは街中でも性能を体感でき、アスファルトの継ぎ目や荒れた舗装でも安定感が抜群でした。
一般道が走れるようナンバー付きで市販されている時点で、「こんなんで街乗りなんてできるかい!」ってことにはならないと踏んでいましたが、予想以上の乗りやすさに「あれ? これガチのスポーツマシンじゃなかったっけ?」なんて疑問が頭に浮かんでしまいました。
ただ、繊細なスロットルワークを求められるAモードは慣れないと気疲れしそうなので、私としては街乗りではBモードが良いカンジでした。
多少ラフなスロットル操作でも楽に運転できるのでとても重宝しました。
ちなみにCモードも試してみたのですが、このモード、びっくりするくらい出力の立ち上がりが穏やかになります。
発進時、感覚としてバイク自体が重くなったように錯覚するほどで、私としてはイメージよりも若干パワーの出力が遅れるため、Bモードの方が走りやすかった印象です。
ただ、雨天での走行時は圧倒的にCモードが安心でした。私は少しでも地面が濡れていると過度に慎重になる傾向があるので、それがCモードの出力特性にマッチしたのかもしれません。
このように、実際に街中で乗ってみたGSX-R1000Rは、外見やカタログスペックで想像したより遥かに優しい印象でした。
街乗りは、スーパースポーツを「唯一の1台」として考える上で、一番心配していた条件だったのでちょっと拍子抜けでした。
(下に続きます)
実際、通勤や通学などを想定してリュックを背負って走行したりもしましたが、そのあたりは後ほど。
この時の私は「これなら峠に行っても楽しめそうだな」なんて呑気なことを考えていて、街乗りで快適だったGSX-R1000Rが、ワインディングで牙を剥くなんて思ってもいなかったのです……
To be continued……