オンロードアドベンチャーでオフロードは走れるか?
前回のワインディング編では『Vストローム650』のスポーツ性能に、良い意味で裏切られ、圧倒されました。
もうその時点で十二分に満足していたのですが、知っていたのが良くなかった。
近くに走れる未舗装路があることを……。
今乗っている「Vストローム」はオンロード重視型とはいえ「アドベンチャーバイク」。走れる場所を知っているのに行かないなんて、俺にはできないッ!
履いているタイヤがオンロードタイヤという点もあり、やはり少し懸念はありますが、オフロードに突撃!
果たして無事走れるのか……?
あれ、意外と走れちゃうんだが……
完全な未舗装路に行く前に、まずは実験!
舗装はされているけれど路面に土や砂利が浮いているような道に入ってみましたが、結果は上々!
アップライトなハンドルでオフロード車のような扱いやすさがあり、しなやかな足周りで荒れた路面でも乗り心地は良好です。
かなり斜度のある坂道でしたが、低回転から力強い『Vストローム650』は2000rpmくらいでも存外パワフルに登っていきます。
パワフルすぎることもないので非常に扱い易く、大柄な車体に関わらず幅も細い道もスイスイ進むことができました。
流石に大きめの落石に乗り上げた時はヒヤリとしましたが、このくらいなら平気で入り込んで行けちゃいそうです。
というわけで、本番のしっかり全部未舗装の道へ突撃!
……いや自分の中ではよしんば走れたとしても流石にしんどくて「ダメだこりゃ!」ってなって、すぐ引き返す、ってシナリオだったんですよ。
それがどうでしょう。
普通に走れてしまうではありませんか。
『Vストローム650』って基本的にオンロード設計のバイクって聞いてたんだけど……?
たしかにネイキッドバイクやフルカウルスポーツなどの純粋なオンロードバイクでも、頑張ればこれくらいのフラットダートなら走れます。
まぁでも極力走りたくないですよね。
しかし、『Vストローム650』の場合、頑張らなくても走れてしまいます。
まぁ、「普通走れる」というと少し語弊があって、不安なものは不安です。当然ですが、ちゃんとしたブロックタイヤを履かせたオフロード車ほどの安心感はありません。
ただ、しなやかな足周りとスタンディングしやすいライディングポジションのおかげで、車体が多少滑ったりグラついても破綻することがありません。
そして大いに役立ったのがトラクションコントロール。
慎重な運転を心がけて走行をしていたものの、流石に大型バイクはパワフルで、オンロード用タイヤも相まって油断するとすぐにリアが滑ってしまいます。
普通のオフロードバイクならば、ダートではトラコンを切り、あえてスライドさせるところかもしれませんが、大型アドベンチャーバイク初心者の私ではそんなのムリムリ!
そこで、逆にトラクションコントロールを2に設定しておくことで、多少ラフなスロットルワークになってしまっても意図しないリアの空転を制御することができ、比較的安心して未舗装路を走ることができました。
ただ、走れるとわかると調子に乗り出すんですよねぇ……
いけるっしょぉぉぉぉぉぉ!
……すぐに我に返ってやめました(笑)
でもこれ、オンロードタイヤじゃなくてセミブロックパターンのタイヤを履かせたらフラットダートはもっと安心して楽しめるのでは?
それに、兄弟モデル『Vストローム650XT』に標準装備されているハンドガードやエンジンガードが無いので、林道ツーリングも視野に入れるならオプションで取り付けた方がよさそうです。
それだとスポークホイールの『Vストローム650 XT』をハナから選べばいいのか? ダートでの乗り心地も良くなるし。
でもオンロードでのワインディング走行は剛性の高いキャストホイールの方が良いのか?
あぁ、『Vストローム650 XT』にも乗ってみたくなってきたぞ⁉
ともあれ、今回試乗した『Vストローム650』でもキャンプ場などでの未舗装路やちょっとした林道走行ならこなせてしまいそうなポテンシャルを感じました!
それにしても『Vストローム650』は自然が良く似合うなぁ。
(下に続きます)
ワインディングだけでは飽き足らず、未舗装路でも可能性を見せてくれた『Vストローム650』。
でもここで正直に白状します。ほんとのほんとにこのバイクは、私が心の中で作製している「自分の乗りたい(欲しい)スズキのバイクリスト」には元々は無かったんです。
それが今やこのバイクこそ乗りたい、までに至っております。
次回は、今回の試乗体験で見た『Vストローム650』を“奇跡のバイク”たらしめているポイントをまとめてみます!
To be continued……
【文:石神邦比古(モーターマガジン社)】