全体的に高水準すぎる『Vストローム650』
まず初めに全「Vストローム」ファンの皆様に謝らなければならないのが、前回の【④ダート編】の最後にちらっと話した通り、アドベンチャーモデルって自分の中での選択肢に上がらなかったんです。
それは今までアドベンチャーモデルに乗ったことが無かったのに加え、「スポーツライディングするならライトウェイトな前後17インチスポーツバイクっしょ!」なんて妄信していたから。
それが蓋を開けてみたらどうでしょう。
アドベンチャーモデル、意外とアリなのでは?
いやむしろアドベンチャーモデルが良いのでは?
といった具合に思考が変化してまいりました……。
でも、一括りに「アドベンチャーモデル」全部がというワケではなく、『Vストローム650』だったからこそ、自分にこう言わしめる体験ができたんだろう、とも感じています。
その理由としてまず挙げられるのが、645ccという小さすぎず大きすぎない排気量設定。
おそらく1000ccを上回るようなビッグアドベンチャーだと自分の腕では扱いきれないし、小排気量だと大型バイク特有のパワフルさを味わうことはできなかったでしょう。
これは、同型エンジンを搭載した『SV650』に試乗した際にも感じたことですが、そのギリギリ身の丈に合う排気量を存分に発揮して楽しめるオンロード特性は最大の魅力ポイントでした。
オンロードに重点を置いた『Vストローム650』はここが一番のウリだとは思いますが、それにしたってこれは凄い、というかズルい!
だって、ネイキッドやフルカウルスポーツなどの純粋なロードスポーツモデルより、アドベンチャーモデルの方が夢中になって走れちゃうなんて夢にも思わなかったんですもん!
そして、ワインディングでの戦闘力と対をなす『Vストローム650』の武器である高速道路でのクルージング性能の高さも忘れてはいけません。
とにかく乗り心地が良く、身体へのストレスが少ないからどこまでも行ける気になります。
少し前にスズキのツアラーモデル『GSX-S1000GT』で超長距離走行を体験しましたが、『Vストローム650』も負けず劣らずの快適性を持っているように感じました。
というか、ライディングポジションはこちらの方が優しそうだし、可変スクリーンにより防風範囲はこちらの方が自分には合っていたから、同じ距離を走ったらどうなるかわからないのでは……?
まるで別物なので一概に比較はできませんが、超長距離ツーリング性能にも期待してしまいます!
また、オンロードバイクとしてはオマケなのかもしれませんが、フラットダート程度なら未舗装路も難なく走れてしまう走破性の高さもあります。
これは確実に「アドベンチャーモデル」である『Vストローム650』のアドバンテージでしょう。
そして『Vストローム650』に私が感じた総合的な魅力は、上記の「スポーツライディング」、「長距離ツーリング」、「未舗装路突撃」に対し“その気にさせる”ところだと感じました。
もちろんこれは『Vストローム650』を見た瞬間からそう思えたわけではありません。
恐ろしいことにこのバイク、乗っているうちに、アレもできそう、コレもできそう、といった全能感を覚えてくるんです。
そもそも最初からこのポテンシャルに気づけていれば、懐疑心なく一目散にこのバイクを選んでいたかもしれません(笑)
やはりバイクには乗らなきゃわからない魅力があるものですね……。
ライダーをその気にさせる要因がシャーシなのかエンジンなのか、はたまたスタイリングなのか。
自分にはまだ判断しかねますが、きっと複雑な要素が絡み合ってここまで心躍らせる1台が完成したのでしょう。
そんな『Vストローム650』は確かに“奇跡のバイク”なのかもしれません!
(下に続きます)
今回『Vストローム650』に試乗したことで、スズキの「Vストローム」をはじめ各社がアドベンチャーモデルを多数投入する、大アドベンチャー時代が到来しているのにも納得できそうです。
まだフロントに21インチホイールを装着したオフロードもバリバリのアドベンチャーに乗ったことが無いので、アドベンチャー世界の入り口に立った、といった程度ですけどね!
さて、次はどの「Vストローム」に乗れるかなぁ~!
【文:石神邦比古(モーターマガジン社)】