復活した『スズキの油冷エンジン』は昔とは異なる魅力がある!
「油冷」といえば「スズキ」といわれるくらい、御家芸として広く認知されてきたスズキの油冷エンジン。
往年の名車『GSX-R750』でそのパフォーマンスを証明して以来、長く油冷エンジンを採用したモデルがラインナップされてきました。
2008年の『GSX1400』を最後に一度はラインナップから姿を隠しましたが、2020年の『ジクサー250』、『ジクサーSF250』登場で、再びスズキ油冷エンジンの歴史が動き出しました。
ただ新世代の油冷エンジンは「油冷」という点では往年のエンジンと同様ですが、以前とは異なる冷却構造を採用しています。
前回紹介した往年の油冷エンジンは、オイルパンに集めたオイルを燃焼室裏に送り噴射&攪拌することで冷却していましたが、新型の油冷単気筒エンジンは燃焼室のまわりに「オイルジャケット」と呼ばれる潤滑回路を用意。
そこにオイルクーラーで冷やしたオイルを直接通すことでエンジンを冷却しています。
そのオイルジャケット内に「バウンダリーレイヤーブレイカー」と呼ばれる突起を作り、オイルの流れる速度を変化させて冷却効率を高めています。
そして、ただの「油冷エンジン」ではなく「油冷SEPエンジン」というのが重要なポイント!
SEP-スズキ・エコ・パフォーマンス エンジンは、原付二種モデルのスクーターにも採用されている、燃焼効率が高く、パワーをスポイルすることなく燃費を上げたエンジンの総称です。
SEPの名を冠するエンジンは、スクーターを除けばこの油冷エンジンのみ!
「スズキ・エコ・パフォーマンス」という名前から、燃費や環境性能が前面に見えがちですが、特筆すべきは高い環境性能を持ちつつパワフルなスポーティーさをスポイルしていないところ!
SOHC4バルブの単気筒エンジンは最高出力26PSを発揮。低回転から粘り強く、高回転域まで気持ちよく回るエンジンは250ccクラスの軽量な車体と合わさりライトウェイトスポーツの楽しさを誰もが体感できます!
ロードスポーツからアドベンチャーモデルまで幅広いモデルに対応できるエンジン。
これからの派生モデルにも期待したいですね!
新型「油冷エンジン」を搭載しているのはこの3台!
そんな新世代の「油冷エンジン」を搭載している現行スズキモデルは3台!
同じ油冷エンジンを搭載しつつも、違った魅力の詰まったモデルがラインナップされています!
ジクサー250
新世代「油冷エンジン」を搭載した250ccモデルの中で最も軽量なネイキッドスポーツ『ジクサー250』。
アップハンドルを採用した軽快感のある走りと、快適性の高さによる街乗りからツーリングまで幅広く対応するオールマイティーな走行性能が魅力です。
特徴的な新設計のLEDヘッドライト、美しい曲線で構成された外装や丁寧に処理されたスポーティーなホイールなど、運動性能だけでなくスタイリングにもオーナーを満足させる魅力がさりげなくちりばめられています。
ジクサーSF250
『ジクサー250』とベースを共有しつつ、スポーティーなフルカウルスポーツに仕立て直された双子モデル『ジクサーSF250』。
セパレートに変更されたハンドルにより、よりスポーティーな乗り味を体感できるとともに、見た目にもレーシーなイメージがプラスされています。
セパレートハンドルですがライディングポジションは優しく、街乗りやツーリングでも十分楽しめる快適性も確保。
油冷のフルカウルスポーツに乗りたいなら『ジクサーSF250』しかない!
Vストローム250SX
2023年8月末に国内販売を開始した『Vストローム250SX』。
2気筒エンジンでオンロードでの快適性、走行性能を重視した『Vストローム250』に対し、軽量でパンチのある油冷単気筒エンジンを活かし、不整地での走破性をプラスした1台です。
特徴的な「クチバシ」デザインを踏襲しつつも、重厚感のある『Vストローム250』に対しシャープで軽快感のあるスタイリングに。
軽くて俊敏なオールラウンダーです!
(下に続きます)
現在、新型「油冷」単気筒エンジンを搭載しているモデルは上記でご紹介した250ccの3モデルなのですが、これらのバイクに共通している重要なことがひとつあります。
それは『軽さにこだわっている』ということ。
その立役者となっているのは新たに復活した油冷エンジンに他なりません。往年の油冷エンジン搭載バイクたちもそうですが、やっぱりスズキは今も昔も『軽量化』を追求し続けているんです。
パワーや冷却効率、環境性能もですが、それ以上に『軽さ』を追い求めるための最大の武器こそがスズキの油冷!
スポーツバイクにおいて『軽さ』はやっぱり正義なのです!
【文:石神邦比古(モーターマガジン社)】