「スズキといえば油冷エンジン」なんてしばしば耳にしますが、それくらいスズキと油冷エンジンの歴史は強力に結びついています。今回はスズキの「油冷エンジン」の歴史について調べてみましたよ!

スズキの「油冷エンジン」はなにがスゴかった?

S-MALLで販売された「油冷Tシャツ」

スズキ公式オンラインモールS-MALLで「油冷」Tシャツを販売するほど、スズキ自体も誇りを持っている「油冷エンジン」。

スズキのバイクを語るにはなくてはならない要素ですが、しばらくスズキのラインナップからはその姿を消していました。

しかし、2020年に登場した『ジクサー250 / SF250』に新型油冷単気筒エンジンが搭載され、スズキの油冷エンジン復活は一躍話題に。
現在は『Vストローム250SX』にも採用されるなど、じわじわと存在感を際立たせてきています。

画像: 『ジクサー250 / SF250』と『Vストローム250SX』に搭載される新型油冷エンジン。

『ジクサー250 / SF250』と『Vストローム250SX』に搭載される新型油冷エンジン。

……でも正直、現代っ子の私(石神・26歳)としては当時の「油冷エンジン」のスゴさがいまいちピンと来てないトコロがあります。

なので、スズキ自慢の「油冷エンジン」の歴史についてちょっぴり調べてみました!

高い性能と耐久性、そしてライバルを突き放す「軽さ」!

画像: 高い性能と耐久性、そしてライバルを突き放す「軽さ」!

スズキの市販車で初めて油冷システムが搭載されたのは、1985年に登場した『GSX-R750』。

油冷システムの正式名称は「SACS(スズキアドバンスドクーリングシステム)」。
それまでの最新冷却システムであった水冷方式とは異なり、エンジンオイルを利用して冷却するシステムです。

仕組みを簡単に説明すると、最も熱を発生する燃焼室裏にオイル溜まりがあり、そこにオイルパンから送られてくるオイルをジェット噴射&攪拌することでシリンダーヘッドの熱上昇を抑えています。

画像: 画像が手配できず簡単な略図ですみません! シリンダーヘッド部分で、ピンクの点線はスパークプラグです。伝わるでしょうか……?

画像が手配できず簡単な略図ですみません! シリンダーヘッド部分で、ピンクの点線はスパークプラグです。伝わるでしょうか……?

冷却に用いるオイルにエンジンオイルを使用することで、部品点数を少なくすることを実現し、冷却効率を向上させながらエンジンの大きな軽量化に貢献。

シリンダーヘッド冷却を終えたオイルは、エンジン各部を潤滑し終えたオイルとともに大型オイルクーラーに送られ、効率よく冷却されたのちに、再びシリンダーヘッド冷却と潤滑に使われます。

性能もさることながら耐久性も飛躍的に向上していて、それはエンジン開発のベースとなった耐久レースを戦うマシンが証明しています。

GSX-R750の場合はその軽量なエンジンに加え、従来のスチールフレームに比べて半分以下の重量8.1kgという軽量アルミフレームも車両全体の軽量化に貢献。

当時ライバルメーカーのレーサーレプリカたちが乾燥重量200kgを超える中、乾燥重量179kgと圧倒的な軽さ。

その「軽い」という一点だけでも、『GSX-R750』はライバルたちに運動性能で大きなアドバンテージを誇っていました。

油冷エンジンを搭載したスズキのバイクたち

1985年の『GSX-R750』以降、高性能な油冷エンジンを搭載したモデルがたくさん登場しました。

流石に全てを追いかけるには台数が多すぎるので、何台かをピックアップしてご紹介します!

1986:GSX-R1100

画像: 1986:GSX-R1100

『GSX-R750』と同じコンセプトで1100ccまで排気量を拡張したフラッグシップモデル。

毎分20Lのオイルをシリンダーヘッド部に吹き付ける1052cc油冷エンジンは、『GSX-R750』同様非常に軽量で、最高出力130PSを発揮しつつ従来の空冷型に対し22%の軽量化に成功。
車両重量も197kgと200kgを切り、パワーウェイトレシオは1.51に達しました。

1988:DR750S

画像: 1988:DR750S

現行モデルで人気を博す『V-Strom1050 / DE』のデザインの原型となったモデル。
「DRビッグ」なんて呼ばれることもある、ラリー用のファクトリーマシン『DR-Zeta』のレプリカモデルです。

750ccビッグシングル油冷エンジンを採用したマシンは徹底した軽量コンパクト化&低重心化が図られ、優れた安定性と不整地での高い走破性を実現していました。

1989:GSX750F

画像: 1989:GSX750F

『GSX-R750』で実証されたエンジンや足まわりの技術を、快適性を追い求めたツーリングマシンに落とし込んだスポーツツアラー。

ツーリングで多用する低中速走行を重視したエンジンセッティングにフルカバードのボディや大型スクリーン、アジャスター付きのブレーキレバーなどを加え、高い走行性能と快適性を両立していました。

1990:DR250S

画像: 1990:DR250S

油冷エンジンを採用したのは大型モデルだけではありません。

1990年に登場した『DR250S』は国内で初めて倒立式フロントフォークを採用した4スト250ccクラスのオフロードバイクとしても知られますが、軽量・高剛性化の裏には新設計の油冷単気筒エンジンがありました。

SOHC4バルブの単気筒エンジンは最高出力29PSを発揮し、全回転域で力強い加速を得られ乗りやすいエンジンとなっていました。

1991:GOOSE350

画像: 1991:GOOSE350

同じく軽量な油冷単気筒エンジンを搭載した中排気量モデル『Goose350』は1991年生まれ。

鋼管ダイヤモンドフレームで構成された車体はスリムで美しく、往年のシングルレーサーを想起させるものでした。

乾燥重量145kgの極めて軽い車体に高剛性な倒立フロントフォークや大径フロントブレーキディスクなどの装備を組み合わせ、安定したコーナリング性能を発揮。

発売翌年には250ccモデル『Goose250』も登場しました。

2000:バンディット1200

画像: 2000:バンディット1200

1995年に登場した『GSF1200』から進化した1156cc油冷エンジンを搭載した『バンディット1200』と『バンディット1200S』。

美しい外観と軽快さを併せ持つ個性的なデザインのマシンです。

低・中速からパンチのある加速を実現した油冷エンジンは最高出力100PSと強力で、パワフルなマシンに求められる制動力の信頼性を確保するため、フロントブレーキには対向6ポットのブレーキキャリパーが採用されました。

2001:GSX1400

画像: 2001:GSX1400

スズキの4気筒バイクとして最大の排気量となる1400ccエンジンを搭載した『GSX1400』にも改良を重ねたDOHC4バルブ油冷エンジンが採用されました。

油冷エンジンとしてはじめてフーエルインジェクションシステムを採用し、始動性や安定性、燃費が向上。

6速ミッションのエンジンはスポーティな走りと快適なクルージングを両立し、スタイリングは大排気量フラッグシップモデルに相応しい、重厚感のあるものでした。エンジン最高出力を100馬力として的を絞りんこんだことにより凄まじい大トルクを発揮。峠でスーパースポーツに食らいつくネイキッドとして今日まで語り継がれています。

(下に続きます)

そして2008年に『GSX1400』の販売が終了すると同時にスズキの油冷エンジンは一度ラインナップから姿を消します。

しかし、2020年に『ジクサー250 / SF250』の登場で油冷エンジンは復活しました!

次回は新しい油冷エンジンの魅力に焦点を当ててみましょう!

【文:石神邦比古(外部ライター)】

復活した新世代『油冷』エンジンの魅力は?

いま買える新型油冷エンジン搭載のバイクはこちら!

スズキファンのためのWEBサイト!

This article is a sponsored article by
''.