スズキ『SV650』のトラスフレームはしなる?
SV650に限った話ではありませんけど、バイクのインプレッションやレビューを読んでいるとよく『フレームがしなって、よく曲がる』みたいな記述を目にする機会があります。
特にSV650みたいなトラスパイプフレームによく言われることです。
ですが、これまで自称・中級ライダーの私(北岡)は『へぇ~。でも高度すぎて自分にはわかんねぇな』という感じでさらっと流していました。
フレームやスイングアームの剛性感っていうのは、それほどスキルが無くても、けっこう誰でも感じられるものだと私は考えています。これはバイク初心者のひとでも同じ。
ビギナー感覚としては『なんか安心感がある』とか『このバイク、怖い』みたいなざっくりしたものになるかもしれません。でも人間のセンサーって鋭敏ですから、それってけっこう正しかったりするんです。
だけど『フレームのしなり』とか言われるとサッパリわからん……という、私と同じような人って多いはず。
SV650の走りが開花する2つの手順
しかし、SV650っていうバイクはおそらく、それを感じやすいバイクなんだと思います。
排気量650ccで最高出力76.1馬力。この『適度なパワー』だからこそ、です。
これがきっと100馬力のハイパワー車だったら基本的な剛性が高すぎて、私程度ではフレームをしならせるなんて世界に踏み入ることができないと思う。
でも、SV650はパワーと剛性のバランスがよく考えられている!?
そこに踏み込む手順は2つ。
これまでの【エンジン編】や【スポーツ編】でお伝えしてきたことが複合的に絡んできますが、大事なのは上の写真みたいなコーナーへの進入です。
まずひとつめは、ちゃんとフロントブレーキで前輪にある程度は荷重をかけながらバイクを寝かせていくこと。ここでは2019年モデル以降に装着された対向4ポットキャリパーが威力を発揮します。
そして、もうひとつは『バイクを狙った角度まで寝かせきること』です。別にフルバンクさせる必要はありませんが、バイクがあまり寝ないコーナーでは“それ”を体感しにくい気がします。
ただし、先に言ったとおり、SV650は高い直進安定性による安心感がひとつの個性なので、車体がバンクしていく速度は、軽快だけど穏やかさもある。
なので自在感の高いフロントブレーキを使いつつ、ぐうぅぅぅ~っ!と『じっくり&きっちり』バイクを寝かせてやる。
それに成功すると、のんびり流して走っている時とは違う『SV650って、けっこう曲がるな!』っていう感覚を得ることができると思う。
ここにもフレームのしなりが絡んでいると思われますが、わかりやすいのはその先。
ブレーキリリース&スロットルオンの瞬間です。
前述の通りタイヤのキャラクターは基本的にツーリング系なので、ブレーキリリースと同時にカクンと向きを変えるようなタイプじゃありません。
なのにSV650はその瞬間、曲がりたい方向へ向けてパンッ!と弾むような感覚で前に出るんです。
そのフィーリングが、エンジンパワーによる加速力だけじゃどうにも説明できない。
ただ、私的にはそれが『フレームのしなり』だと断定する自信が無かったので、裏を取るために上手い人に聞いてみました。
すると『それは大いにありうる』との回答。さらにつっこんで聞いてみると、スチールのフレームは、しなってから、戻るのがアルミフレームより早いんだそうな。
でもフレームが戻る瞬間に、ポンッと弾かれるように曲がろうとするフィーリングって、確かにあるんだって!?
(下に続きます)
ちなみに言うと、サーキットみたいなクローズドコースで超高速でS字を切り返したりすると、もっとわかりやすいと言われました。
まぁ、そんなシチュエーション公道にはありませんので、そこは理解不能でしたが(笑)
大型バイクに乗り慣れた人も『SV650』は虜にする
それが私(北岡)の感じたSV650の走りの二番底です。
フレームに高い負荷が掛けられるなら、ブレーキで荷重を作り出す必要は無いのかもしれませんが、そんなスピードはワインディングじゃ危険すぎるので推奨しません。でもSV650はブレーキをうまく使ってやると、常識的な範囲でも『その世界』が垣間見える。
そして、その弾むようなフィーリング使ってコーナーをクリアしていく。
右に左に、軽快にリズムを刻むように。
本気で言いますが、その時のSV650は最高に気持ちいいスポーツバイクです。
大型バイク初心者には安心感を。ある程度バイクを知っているライダーには操る楽しみを。
そうして幅広い人たちに支持された結果として、SV650はスズキの大型バイクのラインアップの中でいちばんの人気を誇るようになったんでしょうね。
これぞライトウェイトスポーツの真骨頂。
ベーシックなネイキッドスタイルだけど、SV650って、実はものすごく奥が深いバイクなんですよ!