初代や二代目の『隼』オーナーにとって垂涎
最高速の帝王として名を馳せたスズキ『隼』は3代目となって、これまでにない身軽さとコーナーでの一体感を手に入れました。
190馬力でビッグボディの大型バイクとして考えたら、それだけでもけっこうスゴいことなのに、新型『隼』はまだまだそんなレベルじゃ終わりません。
実のところ2代目『隼』のオーナーである私(北岡)として、最も感動したのは『ブレーキの進化』だったんです。
新型のブレーキ、もはや魔法。
こればっかりは私の愛車の2代目『隼』様では何をしても敵わないと感じています。
新型『隼』のブレーキがもはやチート
新型『隼』はフロントのブレーキキャリパーにブレンボの最新キャリパーである「Stylema」を装備。このキャリパーはスーパースポーツ向けに開発されたもので、レスポンスの良さが大きなトピックスとされています。
ブレーキ操作に対するリニアな反応が手に入る。それだけでも2代目『隼』オーナーとしては羨ましい限りだと言うのに……新型『隼』はさらに前後連動ブレーキなんです。
しかも、モーショントラックABSによりコーナリング中でもABSが最適化されるという盤石の備え。
はっきり言いますが、新型のブレーキシステムに対しては、2代目『隼』のオーナーとして……
こんなのチートじゃないかっ!?
と、叫びたくなります。
ズルい、としか言いようがありません。2代目『隼』で同じようなレベルのブレーキングを実現しようと思ったら、けっこう気合を入れる必要があります。
でも新型『隼』の場合は超お手軽。なんなら右手の指1本でOK。
はじめの頃は「そうはいっても260kg級の『隼』には変わりないし」と思って、自分の愛車と同じようにブレーキングしていたんですが、そうするとスピードが落ちすぎちゃって逆に焦る場面が続出でした。
レバーを握るとわかりやすくブレーキ効力の立ち上がりを感じられて、そこから「もう少し強める or 弱める」といった微細な調整すら可能。前後連動システムは制動力もさることながら、強いブレーキでも車体の姿勢がビシッと安定する。
それなりにスピードが乗っている状態だとしても、何の心配も湧いてこない。ライダーの心持ちとしては平和そのもの。
ブレーキング開始からリリースまで、めちゃくちゃスマートに完結します。
制動距離とかじゃなくて『隼が手の内にある感じ』に感動するんです。参った……完全に白旗。
ちょっとした無敵感すら感じる素晴らしいブレーキでした。
新型『隼』は重量も馬力も感じさせない
まだ新型『隼』に対しての慣れが無いので、ドライブモードセレクター「SDMSα」でパワーモードはフルパワーの「1」だけどトラクションコントロールとアンチリフトコントロールを強めにかけた保険モードを自分で作りました。
こういうのが簡単にできるのも本当に羨ましいです。
そして、スルリとほどけるようなブレーキリリース。
そこから新型は先代までとは比較にならないレベルの『正確さ』で狙ったポイントからバイクを曲げていける!
加速フェーズへ移行。電子制御スロットルや6軸をセンシングするIMUで緻密に管理されたパワーは、強力ですけどギリギリ開けられる。
スロットル全閉から、1mm開けた瞬間の唐突さがうまく抑えられているし、大きな車体姿勢の変化もない。だから大丈夫!って思えます。
ただし、加速態勢に移った後の新型『隼』は獰猛。
6000rpmまでのトルク特性を改善したという進化の本領を発揮です。短いストレートなんて一瞬で消し飛ぶ!?
でも、それでも!
新型『隼』は乗り手のポジティブな気持ちを守り通すんです。
バイクとの一体感、軽い動き、優秀なブレーキ。それが隼本来の持ち味である『超安定感』にプラスされているから、バイクを信じられる。
重量264kg。最高出力190馬力。
新型『隼』はそれをライダーの負担にしてこない!
素晴らしい……そう思いました。
隼は隼のまま。それを大切に守り、この先の未来へ残す。
でもそれは『変わってない』ってことじゃない。
(下に続きます)
むしろ逆です。
新型となって、いちばん大きな進化だと感じるのはパワー特性とか電子制御よりも『細部に至るまで、地道に磨き上げられたこと』であり、その結果として13年分きちんと進化していたこと、だと個人的には感じています。
総合的に見ると、けっこう大きく新型『隼』は変わってると思う。
これなら……これほどのバイクなら大型バイク初心者だって何年も乗ってきたベテランだって間違いなく虜にする。
エキサイティングなだけじゃない。それを支える『本物の乗りやすさ』を新型は手に入れています。
今のスズキが持つ『すべて』を投入したという触れ込みに嘘はありません。
1999年の初期型誕生から22年。3代目となる新型。
ここにきて『隼』というバイクは、ひとつの完成を見るに至ったのかもしれません!